元外資金融のCFOが粉飾に加担、1年足らずで上場廃止 AI新興企業「オルツ」不正会計問題の根本原因(1/5 ページ)

» 2025年08月29日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)

株式会社スタジオ02 代表取締役。横浜銀行勤務時代、全銀協へ出向した際はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。06年に支店長職をひと区切りに退社、現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーとともに情報通企業アナリストとして活動している。


 人工知能(AI)開発事業を営み、2024年10月に東証グロース市場への上場を果たしたばかりの新興企業オルツ。上場以前からの不正会計の存在が明らかになり、第三者委員会の調査を経て民事再生法の適用を申請する事態に至りました。

 わずか10カ月で上場廃止が決まり、同社の株主となっている投資家に多大な損害を与えるとともに、東京市場の信頼性をも損ないかねない大問題として、関係者に衝撃を与えています。第三者委員会の報告書を読み解きつつ、なぜ会社関係者が不正を未然に防げず、関係機関が会計不正に気付けぬまま上場に至ったのかを探ります。

出所:ゲッティイメージズ

 不祥事発覚はこの4月、証券取引等監査委員会によるオルツへの内部調査がきっかけでした。ここで粉飾の疑義が生じたのです。

 同社はこれを受けて第三者委員会を組成し、詳細な調査を委託。約3カ月の調査期間を経て7月28日に公表した同委員会の報告書で、架空売上計上などによる不正会計処理の全容が明らかになりました。報告書では、創業者である米倉千貴前社長が不正に手を染めていく過程や、そのスキームの詳細、発覚を逃れるためにとった数々の方策などについて、100ページ以上にわたって詳細にレポートしています。

 オルツのメイン事業はAIを活用した議事録作成ソフトの開発・販売ですが、主力商品「AI GIJIROKU」の売り上げの大半が、実態の伴わない架空売上でした。

 架空売上を計上するようになったのは、2020年の販売開始直後です。当時、同社は売り上げが計画を下回る状況が続き、資金繰りにも窮するような状況にあり、外部からの資金調達が喫緊の課題となっていました。そこで米倉氏が思いついたのが、モニターアンケート調査の名目で広告代理店に支払った資金を、モニター向けのソフト使用料と両建てにして回収する、同額取引での売上増強策でした。

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