山本氏が紹介したAIの活用事例は、実にユニークなものだった。「部下が上司への承認申請をAIで作成。上司は部下から上がってきた申請を、AIでチェックして承認する。上司と部下のコミュニケーションの中に、AIが介在している構図です」。さらに部下は、上司がチェックするであろう箇所を先回りしてAIに確認させるなど、単なる効率化を超えた使い方が生まれているそうだ。
ある店舗の担当者は、オリジナルキャラクターがInstagramで発信する内容を考えるAIを、独自に開発。別の店舗では、社員が自発的にAI勉強会を開催するなど、現場発のイノベーションも続々と生まれている。
定量的な成果も、着実に表れ始めている。議事録作成においては、1時間かかっていた作業が10分程度でできるようになったのだとか。この効率化を全社規模で計算すれば、導入コストの回収は十分可能だと山本氏は分析する。
しかし、急速な普及は新たな課題も生み出していた。「想像以上に社内にAIが早く広く普及していく一方で、『AIを使っているけど、検索だけ』という社員も相当数いることが分かりました」(山本氏)
この課題に対しては、身近な社員の活用事例を共有する勉強会で対応している。また、GeminiはGoogleツールの一つであるため、スプレッドシートなど基礎ツールを使えることが前提となる。「そもそも基礎ツールを十分に使えなければ、AI活用にまで至らないことも見えてきました。AIだけでなく、全社的なITスキル向上が必要です」と山本氏は課題を整理する。
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