「AI利用の障壁として挙がるのは、技術的な部分より心理的な部分です」と語る山本氏。この言葉に、AI導入成功の本質が凝縮されている。
アトレの企業理念には、「しなやかに」という言葉がある。これを山本氏は「遊び心や日頃の業務とは別の余白を大切にすること」だと解釈。実際、社員たちは「ギャル文字で返して」「5W1Hで返して」といった遊び心のあるプロンプトを試しながら、AIとの対話を楽しんでいる。
「導入して終わりではなく、みんなで楽しもうとする文化をいかに設計できるかが大切です」(山本氏)。売り上げも重要だが、それ以上に「AIで仕事を変えるというより、AIに対して人間がどう変わっていくか」という視点が大切だという。
では、アトレはAIと共に歩むこれからの未来を、どのように描いているのだろうか。アトレは2030年に向けて明確な3段階のロードマップを描いている。現在は「Step1:基盤づくり」の段階で、2025年度末までにAIを積極的に活用したいと感じ、具体的な活用イメージも持っている社員の割合を21%から60%以上に引き上げることが目標だ。
次の「Step2:AI活用人材の本格育成」(〜2027年)では、AIパーソナルカラー診断のような顧客向けサービスも含め、現場発のAI活用を加速させる。そしてゴールの「Step3:組織文化としての定着」(〜2030年)では、独自のAIツールを開発・運用することが当たり前になる状態を目指す。
「現在は、Geminiステータスボードを見ても『みんな利用してるね』程度のことしか分かりません。今後は、どのように利用しているのかまで確認できるようにアップデートしていきたいですね」(山本氏)。単純に要約しているだけなのか、壁打ちをして新しいアイデアにつなげているのか、AI活用の質を可視化することが次の課題だという。
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