1971年に京都の北白川で発祥し、こってりを磨き続けてきた天下一品であるが、北白川ではあっさりスープに背脂を乗せて旨みを加えた、独特なラーメンが既に人気になっていた。1947年に創業した「ますたに」という店だ。「元祖!京都背脂鶏ガラ醤油」とアピールしている。
天下一品は、日本の人口構成が高齢化した結果、こってりが口に合わない人が増えてしまい顧客が減っているという実態がある。こうした背景から、京都の西院で天下一品を業態転換した「かけラーメン一(はじめ)」という背脂チャッチャ系で具材が刻みネギのみの実験店を、今年4月にオープンしている。
ベースの「かけラーメン」は400円と安いが、チャーシューとメンマが入った「ラーメン」は600円、半熟玉子なども加わった「スペシャルラーメン」は1290円と、具材が増えるたびに高くなるシステムになっている。
かけラーメン一は、ますたにのマネに見えないよう工夫を凝らしてはいるが、こってりの総本山・天下一品がこういう店を出していること自体、こってりから背脂に時代が移っていると認めたに等しい。天下一品のフランチャイズ店を展開していたエムピーキッチンが、背脂ラーメンの伍福軒を立ち上げてチェーンを脱退するのを、あたかも背中を押したように映る。
ますたにが流行らせた、あっさりスープにコクのある背脂を浮かせたスタイルのラーメンを、都内を含む郊外ロードサイドで全国展開しているのが、1997年に滋賀県野洲市で1号店をオープンした「来来亭」だ。店舗数では天下一品をいつの間にか追い抜いている。
休日は家族連れが多いのが来来亭の特徴だ。天下一品のこってりをおじいちゃん、おばあちゃんから、幼稚園児までファミリーで食べているシーンは想像しにくいが、来来亭のラーメンは背脂が乗っていてもあっさりしているので、顧客層が広い感がある。
来来亭のラーメンは真っ黒ではないが、結構黒い。そして、チャーハン(ヤキメシではない)も黒くてインパクトがある。今、勢いのある来来亭のやっていることを、もっと醤油味を徹底して、関東風につくり変えると、伍福軒の背脂黒醤油ラーメンと黒ヤキメシになるのではないか。来来亭はロードサイドがテリトリーなので、東京都心部には来ないから競合もしないのである。
「天下一品」閉店の背景は? 唯一無二の“こってり”に陰りが見える理由
天下一品も参入? ラーメン×カレーの“二刀流”を実現する外食チェーンはどこかCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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