伍福軒のテーブルには、たくあんが無料サービスで置いてある。
ラーメン店でたくさんのサービスはあまり見たことがない人も多いだろうが、京都発祥の背脂醤油ラーメン「京都北白川 ラーメン 魁力屋」というチェーンでは、たくあんの無料提供を行っている。ちなみにますたにの一部店舗でも、ご飯を提供する際にたくあんを出していた。おそらくではあるが、たくあんサービスの原点もますたになのではないか。魁力屋も、ますたにの創始した背脂ラーメンを受け継いで、郊外ロードサイド中心に店舗数を伸ばしており、都内を含めて現在では約150店まで広げた。
魁力屋の運営企業は、2023年12月に東証スタンダード市場へ上場している。エムピーキッチンは三田製麺所に加え、東京背脂黒醤油ラーメンで勢いを増して2025年中の上場を目指しているようだ。魁力屋による「京都背脂醤油ラーメン」の対抗軸として、伍福軒では「東京背脂黒醤油ラーメン」を打ち出し、上場への弾みを付けようとしているように見える。
魁力屋のラーメンはそんなに黒くなく、焼きめしはチャーシューが多め。見た目は普通のチャーハンだ。伍福軒と都心部のマーケットで競合する可能性があるが、ラーメンとヤキメシ(焼きめし)の見た目の色と、醤油味の強さが相当違う。同じ背脂醤油でも、京都風と東京風で差別化できるだろう。
こうして見ると、エムピーキッチンは天下一品の首都圏有力フランチャイジーとして、著しい成果を挙げながらも、同じ京都ルーツの背脂系ラーメン、あるいは黒っぽい醤油ラーメンがどんどん東京に進出してくるのを目の当たりにし、トレンドの交代を察知したのだろう。
そして、京都の背脂及び醤油ラーメンをヒントに、天下一品のあっさりをベースとして換骨奪胎し、東京、関東の人が好む背脂黒醤油ラーメンへと再構築したのが伍福軒といえる。華々しく登場した伍福軒がこのまま順調に成長していけるのか。動向を見守っていきたい。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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