なぜ、松屋がラーメンに注力? 新業態「松太郎」に行って見えてきた狙い長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/3 ページ)

» 2025年09月04日 16時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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ラーメンと牛丼の決定的な違い

 昨今、牛丼各社がラーメン業態の強化に動いている。その背景には、コロナ禍からの経済回復期に起きた「ミートショック」(飼料高騰などにより食肉価格が高騰する現象)に加え、昨年からのコメ価格の急騰がある。主原料である牛肉とコメの仕入れ価格が高止まりし、経営環境は一段と厳しさを増している。

 そこで白羽の矢が立ったのがラーメンである。小麦を使った麺や豚肉のチャーシュー、スープに使う豚骨や鶏ガラ、煮干しや醤油などの原材料は、コメや牛肉に比べれば比較的安定した価格で調達できる。また、牛丼が「500円の壁」を超えるのに苦労する一方で、ラーメンは「1000円の壁」とされ、価格設定に2倍の余裕がある。牛丼各社にとって、ラーメンは原価にしばられずに手間をかけられる業態であり、海外での人気も高いことから、市場規模においても牛丼を上回る。

 ライバルの吉野家は、牛丼やセルフうどんの「はなまる」に続く第3の成長エンジンとしてラーメンを強化。既にラーメン界のカリスマ・前島司氏が率いる「せたが屋」を傘下に収めている。また、今夏は吉野家で初となる麺メニュー「牛玉スタミナまぜそば」も提供した。すき家を有するゼンショーグループも「伝丸」などのラーメンチェーンを持ち、中華食堂業態「天下一」も展開し始めた。「はま寿司」で提供されるラーメンの完成度も高く、回転ずしと組み合わせる形で市場拡大を狙っている。

 一方の松屋フーズは、松屋で回鍋肉定食やハンバーグ担々麺、松のやで油淋鶏定食を提供している。どこか“中華づいている”印象で、創業時に中華でつまずいたリベンジをしようという意欲もうかがえる。

 牛丼各社がラーメン業態に乗り出す中で、松屋フーズが松太郎と松軒中華食堂をどう使い分け、成長を描くのか。そして、創業時の“リベンジ”を果たせるのかに注目したい。

松太郎のメニュー

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。


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