自動車業界は電動化やカーボンニュートラル、新技術の進化、消費者ニーズの変化など、さまざまな課題に直面している。変化が激しい環境の中で、求められる戦略は何か。未来を切り開くには、どうすればいいのか。本連載では、自動車業界の未来を多角的に分析・解説していく。
マツダの稼ぎ頭であるCX-5の新型が欧州で発表され、2026年には日本での導入が予定されている。しかし、報道によれば、そのエンジンバリエーションは2.5リットルのガソリンエンジンとハイブリッドのみが設定されており、ディーゼルエンジンのスカイアクティブDはラインアップから外されたという。
筆者はこの報道を疑問に思っていた。なぜなら、4気筒ディーゼルのCX-5も主要なラインアップであり、これを指名買いしているファンも決して少なくないと思われるからだ。それを切り捨てるのは、マツダにとって大きな損失であることは間違いない。
欧州で発表されたマツダの新型CX-5。従来型のイメージを受け継いでいるとはいえ、さらに大きく高級感を感じさせるスタイリングだ。しかし人気グレードのディーゼルエンジン車は設定されていない(写真:マツダ)マツダでディーゼルエンジン開発を担当する、パワートレイン開発本部エンジン性能開発部の志茂大輔氏に話を聞くことができた。すると報道は事実だと答えてくれた。
その理由は、最新の2段エッグシェイプ燃焼室を用いたスカイアクティブDの場合、2.2リットルの排気量では燃費が悪くなってしまうからだ。つまり直列4気筒ディーゼルは、現時点の判断では、従来型からの進化が難しい。
左が従来のスカイアクティブDの燃焼室で、複数回に分けて噴射した燃料の燃焼が干渉してしまう。右の2段エッグ燃焼室では、燃料が燃えながらきれいに分離していくので、後に噴射した燃料の燃焼への干渉を抑える。これによって理想の燃焼を実現しているという(画像:マツダ)また、現在開発中の次世代エンジン、スカイアクティブZとユーザー層がかぶってしまうことも、ラインアップから外した理由だという。確かに燃費を重要視するユーザー、低速からの加速感を重視するドライバーにとっては、ディーゼルと近いキャラクターだと受け取られる可能性は高い。
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