企業は「発達障害」の社員とどう向き合うべきか 成果を出す企業に共通する視点(4/5 ページ)

» 2025年09月11日 06時00分 公開
[やつづかえりITmedia]

個人に寄り添うことは「甘やかし」ではない

 実際にニューロダイバーシティに取り組もうとする企業は、(1)と(2)双方の視点を持った上で、どちらかに比重を置くことになるだろう。重要なのは、その選択が企業の価値観や戦略と整合しているかどうかだ。

 ここで一つの懸念として、個人の特性に合わせることを「甘やかし」と捉える経営者が存在する点が挙げられる。

 『ニューロダイバシティの教科書』(金子書房、2020年)の著者で、企業向けに日本型ニューロダイバーシティの実践サポートを行っている臨床心理士の村中直人氏は「ニューロダイバーシティの推進では、仕事の要求水準を下げる必要はない」と指摘している。つまり、必要なのは「要求水準を達成するための方法」を選べるようにすることだ。従来の「決まったやり方」に固執するのではなく、成果に至る道筋に多様性を認めることで、力を発揮できる人がいる点は強調したい。

企業の取り組みが全体最適を生み出す

 ただし、単一の企業で実現できる多様性には限界がある。実際問題として、要求水準を明確にすれば、どうしても合わない人も出てくるだろう。これは必ずしもネガティブなことではない。自社にとって重要な要求を尖らせていくことが、他社との差別化や競争力につながるからだ。

 これを各社が実施すれば、ある企業の要求に合わない人が、別の企業では力を発揮できる可能性が生まれる。つまり、社会全体にニューロダイバーシティの考えが広がり、各社が「自社にとって重要な成果」を明確にしつつ、その成果に至る方法を柔軟にしていければ、前述の「個人のウェルビーイング向上」と「組織の成長戦略」の両立が果たされていくだろう。

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