生活者価値起点の顧客体験をデザインする博報堂のクリエイティブチーム「HAKUHODO CX FORCE」がお届けする本連載。最終回である第5回テーマは「生成AI×CX」。
徐々に浸透してきた業務への生成AI活用。効率化の側面での活用にとどまらず、いかに生成AIとの対話を通じてCX変革の着想を得るか、そして生成AIを革新的なユーザー体験に昇華していくか。今回は、そのような問題意識から、CXプランニングにおける生成AIの活用方針の要点をご紹介します。
この記事を読んでいる皆さんは、生成AIをすでに業務で活用していますか? どの程度、そしてどんな用途に活用されていますか?
最近、筆者が企業のブランドマネジャーや広報担当、デジタル推進担当の方々とお話しすると、上記の問いに対して返ってくる答えはさまざまです。
例えば「議事録の要約に使っている」「SNSの投稿文の叩き台には便利」「FAQ対応の自動化に活用中」などで、業務効率化ツールとしての定着が少しずつ進んできた印象があります。
一方で、現場の方々からは「AIは便利だけれど、ツールで終わってしまっている感じがある」「本当に価値を出せるAIの使い方が、まだ見つかっていない」「顧客体験や満足度の本質的なアップデートには、結びついていない気がする」といった声をよく聞きます。
企業によってスタンスや取り組みの進度はさまざまですが、私たちは、生活者との関係性を深める「顧客体験」(CX)の領域においてこそ、生成AIの真価が表れるのではないか? と考えています。
では具体的にCX領域で、生成AIの真価がどのように発揮され得るのでしょうか。私たちの仮説は、次の3つです。
1つ目の仮説は、生活者理解の拡張です。CX設計の出発点になり得るのは、何よりもまず「インサイト」(生活者洞察)です。
生活者自身も気付いていない感情や、これから芽生えるかもしれない価値観――誰に対しても忖度(そんたく)のない生成AIとの対話を通じてであれば、そうした「言葉にしづらい本音」までも、掘り起こすことを期待できるのではないでしょうか。
2つ目は企業が提供するCX価値自体の向上です。
顧客が接するインタフェースのUX設計や、店頭等での接客のシナリオ、トーン設計の仮説立てが格段にしやすくなるはずです。加えて、実際に顧客接点や顧客体験として、双方向性があり、柔軟な体験を提供するAIが活躍をし始めている状況も追い風になっています。
3つ目は、CXの統合的デザイン/組織間のCX共通認識獲得への貢献です。
ブランド体験の一貫性は、企業が組織横断で、同じ生活者理解や戦略を共有できてこそ成り立つものです。マーケティング・商品企画・営業・CRMなど、各組織が同じ言葉で生活者と向き合えるようにし、かつ、体験設計にも1本の軸を通す。そんなAIシステムが実装されれば、生成AIが企業にとって「マーケティング戦略・戦術を整える触媒になる」という、新たな可能性を示すことにもつながると考えます。
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