コンビニがさまざまな業態のシェアを取り込むことができたのは、「便利さ」を軸にした業態だからだ。
一方で、筆者はこのような業態の垣根を超えた店舗展開が、今後さまざまな業界で広がっていくと考えている。
社会学者のジクムント・バウマンは、現代社会が「リキッド・モダニティ」の時代だとした。「リキッド」とは「液体」のことであり、バウマンはグローバリズムや情報化が進むにつれ、これまでの共同体や秩序などが解体され、社会の流動性が高まると述べている。商業に当てはめて考えると、これまで自明のものとされていた業態意識がなくなり、さまざまな業界がシームレスにつながることを示している。
こうした動きは、すでにコンビニ業界以外でも起こっている。例えば、イオングループが運営する「まいばすけっと」は、「コンビニ化」とも呼べる動きをみせている。
まいばすけっとは関東近郊で爆発的に増えており、従来のスーパーよりは小さく、コンビニに近いサイズだ。一方で、扱う商品は生鮮食品などが多く、スーパーに近い。都内ではコンビニと変わらぬ頻度で目にするほどの店舗数で、その地位を脅かすまでになっている。
また、西友を買収したことで有名になった「トライアル」は、「トライアルGO」というコンビニ型店舗の出店も広げていく予定である。
あらゆる業態の境界線がなくなり、シームレスになりつつある現在。ファミマの衣料品専門店は、現代の商業のあり方を象徴する代表例といえるかもしれない。
都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。チェーンストアやテーマパーク、都市再開発などの「現在の都市」をテーマとした記事・取材などを精力的に行う。「いま」からのアプローチだけでなく、「むかし」も踏まえた都市の考察・批評に定評がある。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』他。現在、東洋経済オンラインや現代ビジネスなど、さまざまなメディア・雑誌にて記事・取材を手掛ける。講演やメディア露出も多く、メディア出演に「めざまし8」(フジテレビ)や「Abema Prime」(Abema TV)、「STEP ONE」(J-WAVE)がある。また、文芸評論家の三宅香帆とのポッドキャスト「こんな本、どうですか?」はMBSラジオポッドキャストにて配信されている。
「廃虚アウトレット」の乱立、なぜ起こる? 絶好調なモールの裏で、二極化が進むワケ
「イオンモール」10年後はどうなる? 空き店舗が増える中で、気になる「3つ」の新モール
セブンの「安売り戦略」がローソンやファミマに勝てない、これだけの理由
なぜ「カレー店」の倒産が続くのか 個人店を追い詰めるチェーンの戦略
「麻布台ヒルズ」はなぜ批判されるのか? 森ビルが“共感されにくい”理由Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング