DXでは、AIが単純・定型・サポート業務だけでなく、中間管理職の管理業務でも大きな役割を果たすようになってきました。結果として、現場の人間に求められる仕事は、課題の定義や優先順位付け、社内外での合意形成など手間がかかる、自動化が難しい業務にシフトしてきています。
いわば、静かな退職を実践している人が避けがちな「人間関係の構築」や「組織間の調整」といった仕事こそが、AI時代には大きなニーズを持つようになります。逆に静かな退職を実践している人がこなす「単純・定型・サポート業務」はAIが取って代わるため、ニーズは低下していきます。
筆者はAIが職場に浸透することで、静かな退職は新たなキャリアリスクを伴うようになると考えています。
すでに、これまで若手社員や新卒が経験を積むために担ってきたアシスタント業務は、AIが代替するようになってきました。実務経験をほとんど必要としない、新卒やキャリア初期の人が担うエントリーレベルの仕事にAIが進出してきているのです。
テック業界においては特にこの傾向が顕著で、新卒採用そのものをストップする企業も現れています。例えば、米Salesforceは2025年のエンジニア新規採用を停止すると発表しました。Claudeを開発する米AnthropicのCEOダリオ・アモデイ氏も、今後5年以内に「エントリーレベルの仕事の約半分がAIで消える可能性がある」と警鐘を鳴らしています。
静かな退職を進めている人の大半は、エントリーレベルの仕事を多くカバーしているはずです。もし、エントリーレベルの仕事の割合をそのままにしておいた場合、徐々にAIによって仕事が代替されていく可能性があります。
つまり、AI時代における静かな退職は、やがて組織から必要とされなくなるキャリアリスクを抱えることになります。静かな退職にとどまらず、「静かな孤立」、そして「静かな離職」へと転じることも懸念されるのです。
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“静かな退職”は悪じゃない なぜ「日本人は休めない」のに「生産性が低い」のかCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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