地方百貨店にイオン、無印、100円ショップ――“異色テナント”で生き残る現場の工夫中編(2/3 ページ)

» 2025年09月29日 07時00分 公開

「デパートに100円ショップ」 若者呼び込む切り札に

 近年は大都市の百貨店でも増えつつある100円・300円ショップのような均一ショップの導入。こうした店舗を出店させている百貨店は調査店舗の半分以上に当たる13店舗。なかには岩手県北上市の「ツインモールさくら野百貨店北上店」のように、100円ショップが2店舗同時に出店しているところもある。

 「100円ショップは百貨店らしくない」と思うかもしれないが、100円ショップには若者の来客も多く、「高齢者向け」となりがちな地方百貨店にとっては、客層や来店頻度の拡大に大いに寄与しているとみられる。

デパートに100均が2店舗!「セリア」「ダイソー」の看板が並ぶ「ツインモールさくら野百貨店北上店」(現在2社の看板は改築により移設されている、撮影:若杉優貴)

 余談ではあるが、こうした格安均一ショップの元祖は大手百貨店・高島屋が戦前にチェーン展開していた「10錢ショップ(テンセンショップ)」。実は百貨店にゆかりがある業態なのだ。

「この町唯一のロフト・無印」が客を呼ぶ

 100円ショップ以外にも、比較的規模が大きな店舗を中心に「無印良品」や「ロフト」「ハンズ」(旧東急ハンズ)、「PLAZA」(旧ソニープラザ)といった大都市圏でも人気の大手雑貨店や、「好日山荘」などの大手アウトドア雑貨店を導入している店も少なくなく、この5社の店舗があるのは調査対象の半分以上となる12店舗に及ぶ。なかには、百貨店自身がFCとして大手雑貨店を運営しているものも複数あった。

 このような大手雑貨店は大都市ではターミナル駅ごとにあることも当たり前ではあるが、地方小都市においてこれらは、ほとんどが「市内唯一」「地域唯一」の店舗であり、店舗の集客力の要の一つとなっている。

 特筆すべきは、秋田県大仙市の郊外にある「タカヤナギイーストモール」。当初は市内中心部にあった百貨店を1994年に郊外ロードサイドの平屋店舗へと移転させた「郊外型百貨店」業態であったが、2022年に学生服売場など一部を除いた直営アパレル売場を廃止して全体を巨大な「無印良品」へと転換。調査対象には加えているものの、もはや百貨店とは言い難い業態となっている。

 タカヤナギイーストモールがある大仙市には、2008年にイオンモールが出店。旗艦店の百貨店業態を廃しての無印良品の誘致は「競争に打ち勝つための背水の陣」であったともいえよう。

 この無印良品は秋田県南で初出店であり、大都市の無印良品とは違い、かなりの広域集客力があると思われる。また、無印良品は衣食住の幅広い商品を扱っているため、元のタカヤナギよりも「品ぞろえが充実した」ともいえよう。

 ちなみに今回調査対象とした地方小都市の百貨店ではないものの、大阪府枚方市の京阪枚方市駅に直結する「京阪百貨店ひらかた店」や、兵庫県宝塚市の阪急宝塚駅前にある「宝塚阪急」といった大都市近郊にある小規模な百貨店も、アパレル売り場を完全に廃止して大型の無印良品へと転換している。

 ここまで極端な例ではなくても、例えば「ロフト」「無印良品」の両方が出店している「トキハ別府店」(大分県別府市)は、少子化の影響もあって直営売り場における子ども服の取り扱いをやめており、子ども服の販売はテナントのみとなっている。このように、多くの地方中小都市の百貨店が集客の要としている大手雑貨店は、不振となった直営・自主編集アパレル売り場を転換したものだ。

人口20万人以下の都市に立地する地方百貨店の中で最も建物が大きい「トキハ別府店」。建物が大きな地方百貨店は「都市部で人気を集める大手テナント」を導入することで顧客・商圏の拡大を図っている。多くは「この町で唯一」の店舗だ(撮影:若杉優貴)

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