Jリーグが仕掛ける“行きたくなる体験” スタジアムに人が集まる秘密(6/8 ページ)

» 2025年09月29日 09時40分 公開

JリーグIDが可能にした統合マーケティング

 マーケティング戦略を支える基盤となるのが「JリーグID」だ。チケットやグッズの購入など、さまざまなサービスを利用できる仕組みで、登録者数は2017年の48万人から2025年7月時点で480万人まで拡大。月間アクティブ率も約25%と高水準を維持している。

 アクティブ率は、単なるページ閲覧ではなく、チケットやグッズ購入、試合への来場、アプリでのチェックインといった「実際の行動」を基準に算出。年1回以上のアクティブ率も約50%と、利用率の高さがうかがえる。

photo 「JリーグID」ではお気に入り選手の登録も可能

 全60クラブには、JリーグIDを基軸としたマーケティングデータベースを提供し、メール配信やアプリのプッシュ通知機能も含めた包括的なツールを用意。

 独自性の高いオープン化により、クラブが独自に開発したアプリやサービスでもJリーグIDの認証が使用でき、そこでの利用履歴もマーケティングデータベースに蓄積される仕組みを構築している。

 J1を中心とした12クラブでは、さらに高度なマーケティングオートメーションを導入。「特定のアクションをした人に送るオファー」などの細かなシナリオ設定が可能で、データを蓄積して施策を実行し、効果を検証するPDCAサイクルが完結する環境を整えている。

photo Jリーグのマーケティングプラットフォーム

 これらの仕組みを支えるため「クラブサポート本部」を設置し、メンバーが各自2〜3クラブを担当。マーケティング部とクラブ、テレビ局とクラブの橋渡しなど、多岐にわたるサポートを提供している。

 「クラブ独自でマーケティングツールを持つケースが多い他のプロスポーツと比べ、リーグ主導でここまでやるのは国内外でもほぼない」と鈴木氏は説明する。

 クラブ間での成功事例の共有も活発だ。競技上ではライバルとなるが、「Jリーグ全体を盛り上げていこう」という思いで一致している。年に数回の勉強会や交流会など、ツールだけでなく、事例の水平展開もできていることが入場者数増加の土台になっているようだ。

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