高齢者がタクシーに「顔認証」で乗れる──そんな実証実験が始まる。日立製作所と徳島県石井町が10月1日から、顔認証技術を使って高齢者向けの移動助成券をデジタルチケット化する。使用済み助成券の保管や管理の手間を削減。交通事業者や自治体の業務効率化を図る。
実証では、外出支援事業で高齢者などに配布しているバス・タクシー移動助成券のうち、タクシー用の紙券を対象に、顔認証技術を活用したデジタルチケットに置き換えて提供する。
乗車時は顔認証による本人確認だけでチケットを利用できるようにした。デジタルチケット利用時に料金はかからないものの、助成額を超えた分は現金またはクレジットカードで支払う必要がある。利用後は登録メールアドレス宛てに利用履歴を送付。チケットの残数はタクシーやWeb上で確認できるようにした。
近年、少子高齢化による運転免許証の自主返納の増加や身体的・環境的要因による移動制約から公共交通を利用する高齢者が増えている。その一方で、全国的には公共交通の利用者は減少している状況だ。特に地方では路線縮小や運行本数が減少し、サービス維持が厳しい状況にある。このため移動機会が限られ、高齢者の外出や健康への影響も懸念されている。
多くの自治体ではバスやタクシーの利用料の助成をしている状況だ。だが、紙の回数券形式で配布するケースも多く、台帳管理や使用済み券の保管、紛失リスク、不正利用などが課題となっている。そこで助成券をデジタル化することによって紛失リスクを回避。手ぶらでの利用によって利便性を高め、高齢者の外出機会創出と移動促進を目指す。
また、利用時に本人確認ができるのでため不正利用を防止できる。交通事業者や自治体にとっても利用状況の把握が容易になり、ペーパーレス化による精算業務の効率化や運用負担の軽減が可能だ。
今後は、バス移動助成券への横展開や近隣自治体との共同化を進めるとともに、観光や小売などの分野と連携。最適な移動手段の検索・予約・決済などを一括でできるMaaSを活用した交通サービスの高度化を、検討していく。
日立はこの取り組みを通じて、地域の公共交通利便性向上と活性化を継続的に支援し、持続可能な地域創生に貢献する。
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