2兆円消失の「ラブブ」運営会社 ライバルの猛追許したIPブランドの死角とは古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/4 ページ)

» 2025年10月01日 08時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

ライバルの猛追を許したポップマート

 ラブブのコンセプトには模倣されやすい余地があったといえる。

 その理由を探るため、有名IP(知的財産)の「スーパーマリオ」と「ラブブ」を比較してみたい。

 任天堂と聞いたとき私たちが最初に思い出すのが、マリオの“あの顔”だろう。特徴的な帽子やつなぎ、ヒゲだけで、世界中の誰もが即座にマリオであると認識する。

 これまでにマリオの類似品が出たことはたびたびあったが、「マリオのパクリ」として社会的な非難を浴び、法的措置の対象となってきた。IPとしての輪郭がはっきりしているため、消費者心理としても本物と模造品との間に境界線を引きやすかった。

 一方で、ラブブのIPは輪郭がぼやけている。「少しいたずら好きで、妖精のような長い耳を持つ、かわいいモンスターのキャラクター」という、抽象的で一般性の高いコンセプトで消費者に認識されているためだ。

 そのため、ラブブの場合は、誰もが特定のキャラクターを思い浮かべることは難しい。そんなIPの「抽象性」が、後発の猛追を許す要因となったのである。

 ラブブのライバルは、ラブブが切り開いた「成功のコンセプト」を採りいれ、消費者の好みに合わせて洗練させてきた。また、ターゲット層を細分化し、最適化させた「よりかわいいモンスター」や「よりクールなモンスター」を新たに創造したのである。

 そのため、ポップマートは著作権侵害という法的な土俵では戦えず、「どちらがより魅力的か」で判断されることになった。

THE MONSTERSシリーズのグッズ(出典:ポップマートの公式Webサイト)
コンセプトは似ているが、顔や装飾に細かな違いがみられるNOMMI(出典:トップトイの公式Webサイト)

 ポップマートの株価が軟調に推移している背景には、今後も多数のメーカーが同様のコンセプトで市場に参入し、レッドオーシャン化することを恐れたためだといえそうだ。

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