みずほ銀行産業調査部・流通アナリスト12年間の後、独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。執筆、講演活動:ITmediaビジネスオンラインほか、月刊連載6本以上、TV等マスコミ出演多数。
主な著書:「小売ビジネス」(2025年 クロスメディア・パブリッシング社)、「図解即戦力 小売業界」(2021年 技術評論社)。東洋経済オンラインアワード2023(ニューウエイヴ賞)受賞。
セブン&アイHDの非コンビニ事業の多くを束ねるヨークHDが、米投資ファンドのベインキャピタル傘下に移った。ただ、ベインの出資比率は6割で、セブン&アイと創業家が合わせて4割を保有。そのため、ヨークHDは引き続きセブン&アイの持分法適用会社であり、資本面での関係は維持されている形だ。
セブン&アイの一連の買収騒動は、カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールによる買収提案の撤回によって終結。セブン&アイは企業価値向上を目的にコンビニ専業体制へ移行した。今回のヨークHD切り離しもその方針に沿ったもので、高収益なコンビニ事業に経営資源を集中させる一方、低収益のスーパーストア事業などを分離する施策といえる。
ヨークHD傘下の事業会社は29社と数は多いものの、合算した売上高約1.6兆円のうち、かつてのスーパーストア事業(SST)であるイトーヨーカ堂(以下、ヨーカ堂)とヨークベニマル(以下、ベニマル)が約1.3兆円を占めている。また、専門店チェーンのロフトや赤ちゃん本舗、外食のデニーズジャパンも有しており、売り上げの大半をこれらで構成している。ヨーカ堂とベニマルを軸とするスーパー事業に、専門店と外食が加わっている構図ともいえるだろう。
ヨークHDの主要5社の事業概況(図表1)を見ると、売り上げや資産配分において、スーパー事業の存在感が圧倒的であることが分かる。
ただ、意外なのは、長らく業績不振のイメージが強かったヨーカ堂が、実は財務面では比較的安定している点だ。確かに、赤字に転落し低収益が続いていたのは事実だが、かつて堅実な経営で知られたヨーカ堂は、直近の大規模な店舗閉鎖を経ても自己資本を維持している。
こうした中で、ヨークHDは新たな経営戦略の概要を発表した。その中心には、ヨーカ堂の立て直しと、2028年の上場を目指した成長戦略が据えられている。
本稿では、9月上旬に行われたヨークHDの戦略説明会での発表をもとに、今後の展望を考察したい。
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