人材不足の影響がかつてない規模で企業経営を直撃している。東京商工リサーチの調査によると、9月に発生した人手不足を要因とする倒産は46件で、前年同月比で約2倍(109.0%増)と急増。また、調査を開始した2013年以降で月間最多を更新した。
1〜9月累計では285件(前年同期比31.3%増)に達し、こちらも過去最多となった。年間を通じて初めて300件を超えることが確実視されており、人手不足倒産の深刻さが鮮明となった。
特に、従業員の退職による倒産が前年同期比1.6倍と大きく伸びており、人材の流動化が加速している。物価高による収益圧迫の中、十分な賃上げ原資を確保できない企業からの人材流出が進み、加えて新規採用も難航しているようだ。人件費高騰の影響も重なり、企業体力の乏しい中小企業を中心に経営環境が一段と厳しくなっている。
10月から最低賃金が全国平均で1121円に引き上げられたことも、中小企業にとっては大きな負担となっている。東京商工リサーチは「人件費増加と採用難の『二重苦』が続く中、人手不足を理由とする倒産は今後さらに増える可能性が高い」と分析した。
調査は1〜9月に発生した負債1000万円以上の企業倒産から、「求人難」「従業員退職」「人件費高騰」に関連する案件を抽出して分析した。後継者難による倒産は対象外としている。
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