トップ営業が“最悪の上司”になる日 チーム崩壊を招いた3つの過ち「キレイごとナシ」のマネジメント論(2/5 ページ)

» 2025年10月20日 08時00分 公開
[横山信弘ITmedia]

右脳派・左脳派とは何か

 あなたは右脳派? それとも左脳派?

 そんな風に問いかけられたことはないだろうか? 人間の脳は右半球と左半球に分かれている。それぞれが異なる機能を担っているという話だ。

 右脳は直感や創造性、感情をつかさどり、芸術的センスやひらめきが得意といわれ、左脳は論理や言語、分析を担当。計画的で数字に強い傾向があるといわれている。ただしこれは脳機能を簡略化した説明であり、どこまでうのみにしていいか分からない。実際の脳は両半球が連携して働くようだ。

 とはいえ人によって、どちらの傾向が強いかは確かに存在する。

 会議での発言を例に観察してみよう。右脳派は「なんとなくいい感じ」と感覚的に話すのに対して、左脳派は「データから見ると」と根拠を示して話す。この違いを理解すると、マネジメントはやりやすくなるだろう。

崩壊したチームの悲劇的なエピソード

 ある大手IT企業で実際に起きた事例がある。

 32歳の新任マネジャーは営業成績が常にトップクラスだった。論理的思考が得意で、数字管理は完璧。典型的な左脳派だった。

 彼のチームには8人のメンバーがいた。デザイナー2人、エンジニア3人、営業3人という構成だ。新任マネジャーは自分の成功体験をもとに全員に同じ指導をした。

 「まず数値目標を明確にしよう」

 「進ちょくは必ず数字で報告してくれ」

 「感覚ではなく、評価もすべて定量的に判断する」

 エンジニアたちはさほど違和感なく受け止めた。しかしデザイナーの大半は困惑した。

 「デザインの良し悪しを数字で表現できません」

 「インスピレーションが大切なんです」

 その言い分に、新任マネジャーは理解を示さない。「それでは評価できない」と一蹴したのだ。

 とりわけ問題になったのは時間管理(タイムマネジメント)である。クリエイティブな仕事にも厳格な時間制限を設けた。

 「長時間考えていてもいいアイデアは出てこない。1時間かけて出ないアイデアは、1週間かけても出てこない」

 と言い切った。

 論理的には正しいかもしれない。しかしこの発言に拒絶反応を示したメンバーは多かった。デザイナーだけではない。営業メンバーも「顧客対応に、あまり時間をかけるな」と言われて反発した。

 「顧客との信頼関係は、時間では測れない」

 「雑談から生まれる商機もある」

 営業チームも分裂した。データ分析が得意なメンバーは歓迎した。しかし顧客との関係構築を重視するメンバーは強い抵抗を示した。

 結果は惨憺(さんたん)たるものだった。3カ月で2人が退職。さらに3人が異動希望を出した。チームの生産性は40%低下。顧客からのクレームも増加した。

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