1GPUで動く"国産AI"の挑戦――NTTが仕掛ける「tsuzumi2」、巨大モデル全盛に一石を投じるか(2/3 ページ)

» 2025年10月21日 13時23分 公開
[斎藤健二ITmedia]

クローズド領域への需要シフト――市場が変わり始めた

 この小型戦略を後押しするのが、企業のAI活用における意識変化だ。生成AIに関するNTTグループへの相談件数は国内だけで5800件を超え、受注も国内521件、海外1306件と合計1800件以上に達している。

 常務取締役で研究開発マーケティング本部長の大西佐知子氏は会見で、企業調査の結果を示した。「63%の企業が、個人情報や機密性が高いデータを、お客さま環境でクローズドに学習させたいと要望している

 当初、企業のAI活用はクラウド上の汎用モデルから始まった。だが実際に使い始めると、企業固有のノウハウや知見が詰まった機密データの活用こそが本丸だと気付く。問題は、そうしたデータをクラウドに上げることへの抵抗感だ。経済安全保障への関心の高まりも、この傾向を加速させている。

個人情報や機密性が高いデータを、お客さま環境でクローズドに学習させたいという要望が多い(提供:NTT)

 大西氏によれば、クローズド領域での利用を検討している企業は既に500件に上る。「オープンなクラウドで動く汎用AIを使ってみると、日本の文化慣習を理解していない、読解力が弱いといった理由で、tsuzumiを検討する企業が非常に多い」。汎用AIで始めた企業が、機密データを扱う段階でtsuzumiに移行する。この「二段階導入」が、NTTの成長シナリオだ。

 企業活動を通じて蓄積されるノウハウの9割は、メール文や提案書といった非構造化情報だという。これをAIが学習するには、データ化、構造化が必要だ。NTTは富士フイルムビジネスイノベーションと連携し、同社のAI技術ブランド「REiLI」で非構造化情報を構造化、それをtsuzumi2で安全に学習する体制を整えた。

 tsuzumi2は金融や自治体といった専門分野の知識を事前学習させている。金融分野のファイナンシャルプランニング技能士2級試験では、事前に200問の学習で合格ラインを突破。Googleの軽量モデル「Gemma-2 27B」が1900問必要とするのに対し、約10分の1の効率を実現した。RAGの性能評価でも世界トップクラスと同等のスコアを記録している。

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