そして興味深いのは、その熱量を支えていたハイエンド層の温度が、すでに下がりつつあるということだ。Bloomberg Newsによると、中国の流通市場でかつてのプレミアム価格を維持できなくなっており、投機的な需要が後退しているという。同記事によれば最近発売したラブブのミニチュア14体入りのブラインドボックスでは、プレミアムの付いた再販価格が発売前のピーク時から24%下落した。
また、キャラクター玩具に特化した中国の転売・取引プラットフォーム、千島(Qiandao)によると、過去3日間(9月10〜12日)の平均再販価格は1594元(約3万3000円)で、正規の販売価格である1106元を上回ってはいるものの、勢いは明らかに鈍化しているという。ポップマートは、再販市場での価格下落について「生産量の拡大により、より多くの消費者の手に商品が届くようになった結果」と説明している(参照:Bloomberg News「ミニ『ラブブ』再販プレミアム、ピーク時から24%下落−投機熱に陰り」)。
一方で、ポップマートの香港市場での株価は直近3営業日で約11%下落。モルガン・スタンレーのアナリストは、同社の業績基盤(ファンダメンタルズ)がやや弱含み傾向にあると指摘している。その背景には、人気商品の一つであるミニラブブが再販によってプレミアム価値を失い、投機的な期待が薄れたことが影響している可能性があるという。
このように、「最新トレンド」という文脈や投資的な価値が失われたことで、ラブブはもはや「プレミア」や「希少性」を目的に取引していた層にとってのトレンドではなくなりつつあるのだ。
一方で、大衆的な側面ではいまだにラブブは流行っているものとして扱われている。前述した通り、ラブブの人気は特定の層でトレンドであることが大衆のトレンドへと転化したという、きわめて空洞的な構造だ。
それゆえに、ハイエンド層でのトレンドが消えれば、必然的に大衆の熱も冷める。流行とは、特定の層が「先に」熱狂することによってのみ成立し、その源泉が枯れた瞬間に大衆の“後追い的熱”も同時に失われてしまう。
筆者が「ラブブってもう流行(はや)ってないよね」という言葉に対して「分からなくもないなぁ」と感じたのは、投資や転売を目的とした市場においてのトレンドとしてはすでにピークを過ぎつつある一方で、SNSや一般消費層の中では今がまさに盛り上がりの最中だからだ。2つのトレンドの波がずれて存在しているともいえる。
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