調査会社のインテージによると、2024年度のヨーグルトの市場規模は約4900億円で、2020年以降、横ばいの状態が続いている。一方で、市場を細分化すると、伸びている分野とそうでない分野が見られる。
「ヨーグルト市場は、比較的ブームが起こりやすいカテゴリーで、2020年以前は『R-1』などの『機能性ヨーグルト』が活況でした。現在は機能性が一時的に落ち着いて、そこをカバーするようなカタチで『高タンパク』や『植物性』、あるいは食感や味わいを追求した高級路線などの『高付加価値ヨーグルト』が市場で存在感を増していると認識しています」(原田氏)
原田氏によれば、高付加価値ヨーグルトは近年多様性が高まり、地域の名産を使った「御当地系」や海外の菌を使った製品なども出ているという。YUDAミルクの沢尻氏も同様の見解で、「高付加価値、高単価のヨーグルトは、ちょうど市場をつくっている段階だと認識している」そうだ。
続けて、原田氏は「ヨーグルト市場の二極化」にも触れた。
「ヨーグルトに限ったことではありませんが、物価高騰に伴い、『消費の二極化』の傾向が顕著になっています。気軽に買える低価格製品は強い需要がある一方で、高付加価値・高単価の製品を求める方も増えているなと。中間層が最も売れづらいと思います」(原田氏)
こうした需要を踏まえ、ドンキは、高付加価値・高単価と低価格の製品に注力していく方針だ。「開発面の課題は山積み」だといい、その背景には、酪農家を取り巻く厳しい環境がある。重労働や利益を得づらい状況から、毎年多くの酪農家が廃業している。製品開発においては、消費者だけでなく生産者の声も丁寧に聞きながら、どちらも製品に反映させていく取り組みが求められるそうだ。
YUDAミルクでは、自社製品の価値向上と酪農家の生活を守る目的で、酪農事業に参入。これまでは牛乳・乳製品の製造・販売のみを手がけていたが、酪農家が廃業して牛が減っている状況に危機感を覚え、酪農事業の育成に着手したという。
「当社が協業しているのは、家族で数十頭を経営している酪農家の方々です。自前ではオートメーション化の設備導入が難しく、365日休みなく手作業で搾乳や牛の飼育をしています。とにかく重労働で後継者が見つからず、廃業される方が多いんです。そうした状況から地域の産業を守ろうと酪農業を開始しました。自社で飼料も手がけることで、より高品質な牛の育成にトライしています」(沢尻氏)
市場が拡大する高付加価値ヨーグルト。消費者のニーズを満たす製品開発や販売網の強化も重要だが、酪農業界の課題に真摯(しんし)に向き合う姿勢も欠かせないようだ。
1981年生まれ。フリーランスライター・PRとして、「ビジネストレンド」「国内外のイノベーション」「海外文化」を追う。一般社団法人 日本デジタルライターズ協会会員。エンタメ業界で約10年の勤務後、自由なライフスタイルに憧れ、2016年にOLからフリーライターへ転身。その後、東南アジアへの短期移住や2020年〜約2年間の北欧移住(デンマーク・フィンランド)を経験。現地でもイノベーション、文化、教育を取材・執筆する。2022年3月〜は東京拠点。
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ドンキ「152円ビール」じわり人気 “地味過ぎる”見た目になった深いワケCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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