観光庁によると、2025年1月から9月まで日本を訪れた中国人観光客は748万7200人で、訪日外国人観光客全体の約24%を占めている。これだけ多くの旅行者を送り出しているため、日本のインバウンド消費で「中国マネー」の存在感も大きくなる。2025年7〜9月期の訪日外国人消費額(1次速報)によれば、中国人の観光消費額は5901億円。全体の27.7%を占めて国別ではトップになっている。
つまり、われわれはニュースやバラエティー番組によって、日本には欧州や中東から多種多様な外国人観光客がやって来る「世界で人気の観光地」というイメージを抱いているが、「数」や「消費」を冷静に見ると、まだレアアースや医薬品原料と同じく「中国依存」から脱していない、という動かし難い事実があるのだ。
「いや、中国人観光客が減れば、その代わりにこれまでオーバーツーリズムで旅行を敬遠していた日本人観光客が増えるのでそれほどダメージはない」と主張する人もいるが、こちらも「数」を見れば、そんなマンガのような都合のいい展開はあり得ないことが分かる。
日本人観光客は、中国人観光客ほど観光にカネを落とさないからだ。
2024年の日本人国内旅行1人1回当たり旅行支出(宿泊旅行)は6万9362円。一方、中国人観光客の旅行支出は23万9162円である。つまり大ざっぱにいえば、中国人観光客が1人減ったら、日本人観光客が3人押し掛けないと経済的損失がカバーできないのだ。深刻な人口減少が進行する今の日本でそんな芸当ができるわけがない。
日本人観光客の消費額が少ないことに納得できない人も多いだろうが、これは自分自身も胸に手を当てて思い出していただきたい。日本人もハワイやパリではショッピングやら高級ホテルやレストランで高いカネを払うことにちゅうちょはないが、日本国内の旅行では「安くてうまい」を巡っている観光客が多い。
安倍政権で「観光立国」を打ち出す前、観光業というのは典型的な斜陽産業だった。高度経済成長期の社員旅行やツアー団体旅行が減少したことで、観光地には廃ホテルが増え、閑古鳥が鳴いていた。しかし、インバウンドに力を入れた途端、不死鳥のごとくよみがえった。
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