「日中関係の悪化」で仕事はどうなる? 900万人が不安を感じる“もしも”の話スピン経済の歩き方(7/7 ページ)

» 2025年11月19日 06時00分 公開
[窪田順生ITmedia]
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中国に「政治利用」されないために

 なぜ筆者がそう思うのかというと、先ほど触れた中国外交部が発表している「渡航自粛」だ。

日本の指導者が公然と台湾に関する露骨な挑発を行い、人的交流の雰囲気を著しく悪化させ、在日中国人の身体と生命の安全に重大なリスクをもたらしている。

 この他にも最近、「日本にいる中国人に対する犯罪が多発している」と中国外務省は自国民に警告を出しているのだ。

 「はい? 逆でしょ」と失笑する人も多いだろうが、中国が公式にこういう「スピンコントロール」(世論誘導)を仕掛けてきたということは、さらに一歩進んで何かしらの「既成事実」をでっちあげる可能性もあることに用心しなくてはならない。

 といっても、中国人観光客を「被害者」にするのは難しい。愛国心が強い日本人に嫌がらせや暴行を受けたというような「事件」をでっちあげれば、さすがに足がつく。そうなると狙うのは、中国人労働者を「被害者」とするストーリーだろう。

 近年、技能実習生はベトナム人が増えているので、給料未払いやハラスメントの被害者はベトナム人だが、ほんの10年前はこういう「中国人被害者」がいた。

 もし今、このような「告発」があったら、中国政府は鬼の首を取ったかのように「高市首相の発言で日本国内の中国人がいじめられている」と騒ぐというのは容易に想像できよう。

 国家間の問題と個人は本来関係ないが「世論戦」ではそこを巧みに利用する、というのが世界の常識だ。

 コンビニバイト、工場労働者、建現場の作業員、介護スタッフなど……40万人もいるので、周囲に中国人労働者がいるという事業者も多いはずだ。

 「こんな微妙な時期に、中国につけ込まれるような問題を起こしやがって」と社会からフルボッコされないように、中国人労働者を雇用している事業の皆さんは、これまで以上に指導や労務管理、そしてコミュニケーションに気を配っていただきたい。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受


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