そうした中、2021年7月には、ドラッグストアを中心に展開してきたTSUBAKIやunoなどの主力ブランドを、欧州投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズへ1600億円で売却した。
当時の日本は、世界がコロナ禍収束へ向かうムードとは逆行し、依然として自粛の真っ只中にあった。しかし、自粛解除とともにインバウンド需要が戻ってくるという期待感があったことを踏まえれば、経営資源を高価格帯へ集中させるという判断自体は、必ずしも間違いだったとはいえないだろう。
また、以前の中国人観光客による“爆買い”の勢いを考えれば、現在のように、中国で200円以下の「貧乏人セット」が流行し、消費者マインドが急速に節約志向へと転じることを読み切るのは困難だったはずだ。
ただ、皮肉なことに、資生堂が売却したブランドは、CVC傘下で元カネボウ社長の小森哲郎氏をCEOに迎えたファイントゥデイホールディングス(以下、ファイントゥデイ)の下、好調に推移している。
ファイントゥデイは日本国内にとどまらず、世界11の国・地域で事業を展開している企業だ。資生堂は2024年6月、保有していたファイントゥデイの残り20%の株式もCVCへ売却しているが、もしこの事業が今も資生堂傘下にあれば、現在の中国やアジアの不振を一定程度カバーできたと思われても不思議ではない。
もちろん、小森氏の経営手腕も大きいが、ファイントゥデイの順調な成長ぶりを見ると、資生堂はCVCにうまく乗せられたのではないかという見方が出てくるのも理解できる。
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