一方、この傾向は日本人にとってもチャンスになる可能性がある。要は、リスクを負って、手間と時間をかけて海外に行かなくても、日本にいながらにして海外企業で働けるからだ。海外企業のリモート社員として、ドル建てで給与をもらうという働き方もできる。もちろんある程度の英語スキルは必要になるが、メールなどのやりとりであれば、AIを活用することで多くの言語にも対応できる。
2024年の海外の統計では、国境を越えたリモート採用などの需要は拡大しており、約43億ドル規模の市場になっているとの報告もある。賃金が上がらない日本企業にしがみつくよりは、海外に目を向けることも選択肢の一つである。
もっとも、日本でもようやく賃上げに向けて意識が変化してきたようだが、「安すぎる日本人材」の状態から脱することができるかどうかが、今後の勝負になるだろう。それができなければ、日本の頭脳がどんどん流出することになりかねない。
かつて日本や欧米の企業は、中国などに安価な労働力を求めてきた歴史がある。日本も気が付けば、“使い勝手のいい人材”がいる国として、安価な労働力を求められるだけの国になってしまうかもしれない。まずはその現実を認識する必要がある。
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)、『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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