2025年7月、同社はまず夜間の電話対応からAI活用をスタート。導入からわずか数カ月で、成果は数値として表れた。
夜間の電話対応は、100%の無人化を達成した。これまで外部事業者に委託していた夜間対応が、AIによる自動応答に完全に置き換わったのだ。
夜間の問い合わせは、自動販売機の故障や商品トラブルなど、内容がある程度パターン化されている。AIがシナリオベースで複数の選択肢を提示し、顧客自身が状況を選ぶ仕組みにしたことで、有人対応なしでも問い合わせを完結できるようになった。
さらに特筆すべきは、AI対応による途中離脱が0件だったことだ。AIが電話を受けても、顧客が途中で電話を切ってしまう「離脱」は、自動応答システムの課題として知られる。
「発信者の方が途中で離脱してしまうことがなく、全て対応が完結しています。これは想定以上の結果でした」(五十嵐氏)
さらに、日中の電話対応でも成果が出ている。夜間のAI導入と並行して、日中の電話対応にも同様の仕組みを取り入れた。AIが問い合わせ内容を判別し、適切な部署に振り分けるというものだ。
従来、コールセンター宛ではさまざまな問い合わせに対応していた。商品の注文から、自動販売機の故障報告、請求に関する確認まで、内容は多岐にわたる。オペレーターは自分の業務を中断して電話を取り、担当外の内容であっても対応した上で、適切な部署に転送しなければならなかった。
AIが音声案内と電話転送を組み合わせて対応することで、こうした課題は解消された。オペレーターが担当外の電話対応から解放された結果、半数以上の電話を自動化できるようになった。
こうしたAI導入の効果は、営業担当者の働き方にも変化をもたらしている。
AI導入前は、夜間の入電のうち10〜15%程度は、「緊急対応」としてフィールドセールスにエスカレーションされていた。しかし、AI導入後の7〜10月までの約4カ月間で、緊急対応はわずか1件にとどまった。
従来、夜間に問い合わせが入った際、「緊急対応が必要かどうか」の判断はオペレーターに委ねられていた。しかし、明確な基準がないまま判断していたため、対応にばらつきが生じていた。本来は翌営業日の対応で問題ない案件でも、「念のため」と現場に向かうケースも少なくなかった。
「AIを導入以降は、事前に設定した“シナリオ“に基づき、お客さま自身に状況を選んでいただいています。これにより、客観的に緊急性を判断できるようになりました」(五十嵐氏)
顧客が自ら状況を選ぶことで、緊急度の判断が標準化された。例えば、「自動販売機が故障して商品が出てこない」のか、「補充の依頼」なのかによって、対応の優先度は明らかに異なるだろう。AIがこの切り分けを行うことで、真に緊急性の高い案件のみが営業担当者に通知される仕組みが整った。営業担当者の夜間・休日の負担は大幅に軽減され、本来の営業活動に集中できる環境が整いつつある。
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