2025年9月、フォーカスはオーストラリアでのサービスを開始した。構想から約5カ月でのスピード進出だ。「海外展開を考え始めたとき、1年以内に事業を開始できるとは思っていなかった」と常松氏は振り返る。
海外展開を短期間で実現できた背景には、ローカライズの必要がなかったことが大きい。顧客がシャツを選び、加工方法を決め、デザインを入稿し、届けるという流れは、日本でもオーストラリアでも変わらない。シャツメーカーへの発注方法やシステムの受け口も同様だ。日本で独自の仕様を作り込んでいなかったため、既存のシステムをほぼそのまま流用できた。
9月時点で1日11件だった注文は23件(12月3日の取材時点)まで増え、リピート顧客も獲得している。工場は現地企業に外注し、注文処理や顧客対応は日本から行う体制だ。日本との時差も1時間のため、リアルタイムでのやり取りに支障はない。
オーストラリアではコットン100%の製品が主流だが、これは消費者の好みではなく、現地業者の設備がコットン専用であるためだという。同社が得意とするポリエステル製品で価格面などにおいて差別化できる余地があると常松氏は見ている。
採用の面でも布石を打っている。2026年春入社の新卒18人のうち、13人が外国籍だ。バイリンガル人材向けの就活イベントに出展したところ、世界大学ランキング100位以内の大学6〜7校から応募があり、14人に内定を出した。
「1人採用できればいいと思っていたのに、13人が承諾してくれた」というが、その理由について、常松氏はこう推測する。「まだ30億、40億円の会社だが、世界展開すればユニコーンになる可能性がある。そこに自分たちが中心となって関われると感じてくれたのではないか」
同氏によると、オリジナルプリント事業は各国で市場規模が小さく、地域密着型の小規模事業者が大半を占めるという。「日本でも業界全体の市場規模は1500億〜2000億円程度ではないか。世界展開を本格的に目指す企業がどの国からも出てきていない」と分析する。
先に動いた者が市場を獲得できる。常松氏が目指すのは「オリジナルプリント界のAmazon」だ。「小さい会社だからできないと思い込んでいるだけです。学び、理屈を組み立て、協力者を募ればできる。30代、40代の経営者には、国内にとどまらず世界に出てほしい。50代の私でも挑戦しているのですから」
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