大正時代まで、火葬は夜間に行われるのが一般的だった。その文化を変えたのが、東京博善だ。1927年(昭和2年)に火葬炉の改良でにおいや煙の軽減に成功して、町屋斎場において、日本で初めて「昼間火葬」の許可を取得した。このスタイルが日本全国に広まって現在に至るのだ。その東京博善が100年を経て、再び「夜間火葬」を始めたというのも興味深い。
さて、夕刻葬の狙いは分かったが、東京博善で気になるのは、やはり「火葬料金問題」だ。ネットやSNSの「高すぎる」「中国資本が価格を釣り上げている」という批判について、野口社長自身はどう考えているのか。
「今、私たちはさまざまな地域の公営火葬場について、行政が開示している情報などと比較しながら、東京博善の火葬料金が妥当なのかという評価を第三者に委託し、自分たちの評価を進めています」
そのように野口社長は多くを語らないが、東京博善は上場企業である広済堂HDのグループ会社だ。経営状況は監査法人の監査を受け、情報は開示されており、誰でも確認できる。その決算資料の「葬祭公益事業」を見ると、2023年3月期は赤字。以降、事業としては黒字だが「葬祭公益事業損失準備積立金」にまわされているので結局、赤字となっている。つまり、親会社に配当もしていないので「中国資本が火葬事業で大もうけ」なる事実はどこにも存在しないのだ。
「今期も第2四半期決算段階では法人税や火葬炉特別修繕積立金などを除くと収支はマイナスとなっています。なぜ損失準備積立金をするのかというと、火葬場は施設として絶対に減らしてもいけないし、止めてはいけないものだからです」(野口社長)
一般的な営利企業なら、利益の出ない事業があれば撤退や縮小ができる。しかし、火葬場という公共事業の場合はそうはいかない。何があっても火葬事業を継続しなくてはいけないし、6つの火葬場を守り続けなくてはいけない。そこで火葬炉の修繕の積立だけではなく、施設の大規模建て替えに備えて積立をしているのだという。
他の民間火葬場と比べても、突出して火葬料金が高いわけではない。しかも、上場企業のグループ会社なので収益構造もかなりオープンになっている。にもかかわらず、なぜここまで「火葬で荒稼ぎするイメージ」が広められてしまったのか。
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