一方、自治体側にも全く落ち度がなかったとはいえません。
全国約1700の自治体は、その規模や財政力、組織の能力・体力などが千差万別です。むしろ十分なリソースやスキルが備わっていない自治体が多数派だったことも想像に難くありません。もし政府が注視していたのがこうした「弱い自治体」であったなら、従来の自治体の課題を改めさせるには、「何も考えず政府の指示に従えばいい」という手法こそが効率的だと捉えていたのかもしれません。
結果として、政府主導の進め方に十分な歯止めをかけられなかった側面は、力不足の自治体側にもあったといえるでしょう。
ここまでの一連の取り組みにより、わが国は多くの労力と予算を無駄に費やす結果となりました。財政や社会インフラに与えた影響は甚大であり、そのツケは今後も長期にわたって返済していく必要があるでしょう。本来であれば、この失敗を教訓として「次」へと進みたいところですが、現時点ではまだ「今」の課題が解決されていません。自治体としては、まず生き残ることを最優先にしていくしかなさそうです。
さて、前回と今回の記事を通して「政府」という言葉を意図的に使ってきましたが、本来、政府には多くの省庁があり、さまざまな立場の関係者がいます。その中には、私たちのために誠実に尽力してくださっている方も大勢います。ひとまとめに「政府」として断じるのは適切ではなく、この状況を招いたのは、あくまで一部の関係者なのかもしれません。
筆者としては、少なくとも今後訪れるであろう困難な時代を、当事者としてしっかりと受け止めていただきたいと思います。そして、もし次の機会があるならば、どうか同じ関係者が再び主導権を握ることがないよう、心から願っています。
「自治体システム標準化」は、なぜここまで迷走するのか? 現場で見えた2つの“ボタンの掛け違い”
なぜ自治体の仕事は誤解されるのか 行政現場に潜む「情報の非対称性」の正体
「AIワークフロー」は自治体に広がる“格差”を埋められるか? 実際に作成してみた
広報・告知がここまで変わる Sora2で“伝わる動画”を簡単生成する方法
異動は「異業種への転職レベル」、現場は疲弊 自治体職員の働き方はどこへ向かう?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング