パスワードを廃止できない事情は、各社に共通する。だが、その先に見据える「パスワードレス」への道筋は、三者三様である。
最も積極的な姿勢をみせるのがウェルスナビだ。浦野氏は「来年にかけて、パスワード認証を廃止することに取り組みたい」と明言する。
背景には、日本証券業協会と金融庁のガイドラインがある。2026年夏までにフィッシング耐性のある多要素認証が必須化される見通しで、「それに適合する技術は、現状パスキー以外に考えづらい」と浦野氏は語る。
技術面での期待もある。Appleが開発を進める「パスキーのオートマティックアップグレード」という機能だ。パスワードでログインすると、自動的にパスキーが作成される仕組みで、ユーザーが意識しなくてもパスキーへの移行が進む。「まだ世の中に普及していない技術だが、こうした機能を導入することで、パスキーの普及で課題となっている部分を解決できる可能性がある」と浦野氏は期待を寄せる。
一方、SBI証券はユーザーの選択に委ねる方針だ。渡辺氏は「理想は、パスキーの方にお客さまを誘導すること」としながらも、パスワードでのアクセスを許可するかどうかを、ユーザー自身が設定できる機能を検討しているという。
パスキーへの誘導策も講じる。「通常のID・パスワードで入られた時に、セキュリティ強度が上がるような追加の認証を求めることも検討している。パスキーなら追加認証なしでスムーズにログインできるという形で、パスキーの利便性を実感していただきたい」と渡辺氏は説明する。
最も慎重な姿勢をみせるのが楽天証券である。平山氏は「完全に必須化した証券会社はまだない。キャッチフレーズとして言っているだけだ」と指摘する。
野村證券など対面証券の一部は「パスキー必須化」を打ち出しているが、実態はどうなのか。「対面証券は営業店を持っているため、必須化しても『何かあったらお電話ください』と伝えられる。ただ、営業店は日中しか対応していない」と平山氏は指摘する。
楽天証券が重視するのは、誰も取り残さないという姿勢である。対応ブラウザを制限してはどうかと問うと、平山氏は「それは利用者を制限しろと言っているのと同じだ。われわれは資産形成の民主化を図っている。古いスマホを使い続ける方も一定数いらっしゃるが、その方々に使えないとは言えない」と語った。
3社の戦略をまとめるとこうなる。ウェルスナビはパスワード廃止を目指す「必須化路線」、SBI証券はユーザーに選択を委ねる「選択制」、楽天証券は全体の必須化には慎重だが、パスキーを選んだユーザーには厳格に運用する「段階的移行」だ。正解はまだ見えていない。
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