パスキーの普及には、証券会社だけでは解決できない課題も多い。
デバイスやOSの進化は、AppleやGoogle、Microsoftなどに委ねられている。Windows Helloのクラウド同期対応や、Appleが開発中のパスキーエクスポート機能など、改善の動きはある。しかし、証券会社が能動的に働きかけることは難しい。浦野氏は「テクノロジーの進化に期待するしかない部分がある」と話す。
家計簿アプリなど、外部サービスとの連携も課題である。多くの家計簿アプリは「スクレイピング」と呼ばれる手法で証券口座の情報を取得している。ユーザーから預かったIDとパスワードを使って証券会社のサイトにログインし、画面から情報を読み取る方式だ。パスキーが必須化されると、この手法は使えなくなる。
楽天証券では、家計簿ソフト事業者と契約を結び、非公開のAPIを通じてデータを提供しているという。ウェルスナビも同様にAPI連携を提供している。SBI証券は、「現状も電代業者からのアクセスもできるようにしているが、今後の当社のセキュリティ施策を踏まえ、APIの提供も検討している。」(渡辺氏)
各社が目指す「パスワードレス」の実現には、まだ時間がかかる。楽天証券の平山氏は「3カ月後かもしれないし、半年後かもしれないし、3年後かもしれない」と見通しの難しさを語った。浦野氏は「セキュリティと利便性のバランスをどうとっていくかは、当社のみならず、世界的なデジタルサービスの課題だ」と述べた。
「使いたくない人」や「使えない人」を置き去りにせず、いかにパスワードレスの世界へ導くか。証券各社の試行錯誤は続く。
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