原材料も製法も同じ、なのに10倍売れた! 地味な「玄米せんべい」の“オシャレな売り方”(2/2 ページ)

» 2026年01月07日 07時30分 公開
[熊谷紗希ITmedia]
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米国では「ライスケーキ」として浸透していた「ぽんせんべい」

 2020年5月に初めて鶴田氏はオカビズを訪問。センター長の高嶋舞氏からヒアリングを受け、意見交換を行った。ぽんせんべいの特徴と魅力を掘り下げ、今の時代に求められるニーズと照らし合わせた結果、ぽんせんべいを「ヘルシーでポップな健康食」として再定義し、健康意識の高い層に届けるという提案を受けた。

 高嶋氏は「ぽんせんべいは米国では『ライスケーキ』と呼ばれ、朝食にも出てくる一般的な食べ物です。日本で販売されている商品もほとんどが輸入品ということが分かり、『国産ライスケーキ』として健康志向・美容意識の高い層にターゲットを移すことを考えました」と話す。

 そこから鶴田氏は週1でオカビズに足を運び、コピーライターやデザイナーに相談を重ねた。商品自体には手を加えず、名称、パッケージデザイン、販路と価格を調整した。

 名称は「玄米せんべい」から、「オン・ザ・玄米」に改名。オカビズと話し合いながら「ぽんせんべい(玄米)を土台に、上に何か乗せて食べてほしい」という思いを込めたという。年配層向けで地味だったパッケージも修正を繰り返し、若年層が手に取りたくなるようなシンプルでオシャレなデザインを採用した。販路は道の駅からECに移行し、価格も5枚入り216円から351円に改定した。

【訂正:2026年1月7日午後0時44分 オン・ザ・玄米の価格表記に誤りがありましたので「130円」から「216円」に訂正いたしました】

「オン・ザ・玄米」としてリブランディングした(画像:ウイポップ公式webサイトより)

 上記に加え、オン・ザ・玄米では食べ方の提案も行った。それまでは「袋から出してそのまま食べる」が一般的だったという。オカビズの紹介で、岡崎市内のビストロの力を借りてレシピを開発。チーズやサーモン、アボカドや刻んだトマト、旬の野菜などを乗せた朝食メニューが誕生した。写真をECサイトに掲載し、消費者が調理のイメージを持てるようにした。

 リブランディングの結果、これまで「玄米せんべい」としては年間2000袋弱だった販売数は2024年には2万〜3万袋に達した。コロナ禍での健康志向が追い風となったことに加え、近年はトレーニングをしている人が購入する機会も増えているという。

 海外輸入品の玄米商品は存在するが、砂糖や塩などの味付きや雑穀との混合商品も少なくなかった。ウイポップの商品は原材料が玄米100%で、玄米本来の甘さと香ばしさがあり、その点が支持されていると、鶴田氏は話す。

食べ方の提案も行った(画像:ウイポップ公式webサイトより)

 オン・ザ・玄米のリブランディングを皮切りに、他の商品もリブランディングや一部改良を施し、2020年には「HEALTHY & POP」という新ブランドを立ち上げるに至った。新ブランドの商品がけん引し、自社商品の開発やOEMを担う食品事業部の2025年4月期の売り上げは2020年4月期と比べて3900万円増加。OEMの問い合わせもオカビズへの相談前は19件だったが、2025年4月期には41件と倍以上となった。

 「ぽんせんべいは、お菓子だけではなく食事として使用する、食品としての流通を目指しました。当社のぽんせんべいは専用機器を使い、1枚ずつプレスしながら焼き上げる製法を取っています。原料と製法にこだわって時間と手間をかけているので、価格を上げてもいいのではないかと考えていました。今回のリブランディングを経て、新たな層に新たな価値として届けられたのは大きな一歩だったと思います」(鶴田氏)

 商品改良に踏み切らなくても、売り上げは伸ばせる。ウイポップの「玄米せんべい」は、リブランディングと販路転換によって、支持される顧客層そのものを塗り替えた好事例といえるだろう。

「オン・ザ・玄米」(左)、「玄米せんべい」(画像:ウイポップ提供)
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