学研が挑む"真のDX"──「本当に使われるデジタル」で目指す教育価値のバリューアップ
【開催期間】2026年1月27日(火)〜2月25日(水)
【視聴】無料
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【概要】学研グループは、DXを目的化するのではなく、現場と顧客にとって“本当に使われるデジタル”を出発点に教育価値のアップデートに挑戦しています。本講演では、現場で浮き彫りになった課題や、実際に行ってきた改善や仕組みづくり、そこで得られた知見がどのように学研のDX推進を形づくんできたのかをお伝えします。既存のデジタル活用の成果と学びを振り返りながら、学研が目指す“真のDX”の姿をご紹介します。
丸亀製麺を運営するトリドールホールディングスには、最高年収2000万円を目指せる特別な「店長」の肩書がある。
「ハピカンキャプテン」と呼ばれる彼らは、「店舗管理」を副店長に任せ、従業員と顧客の体験価値を最大化させることをミッションとしているのだ。現在は全国で5人のハピカンキャプテンが活躍しているという。
このユニークな店長制度の背景には、同社が掲げる「心的資本経営」の考え方がある。この経営理念は、創業者の粟田貴也トリドールHD社長が2025年9月に表明したもの。従業員と顧客を共に感動させることを目指しており、近年注目されてきた「人的資本経営」を独自の手法で進化させた形だ。
「外食産業で省人化、省力化が進む中で、働く人とお客さまの心と心が通い合い、感動を生む『心的資本経営』は、商売繁盛につながる大きな力があると確信しています」(粟田社長)
「心的資本経営」とは、一体何なのか。年収2000万円を目指せる店長制度を用意した狙いは? 南雲克明・CMO兼丸亀製麺常務取締役マーケティング本部長に聞いた。
南雲克明(なぐも・かつあき)1996年にオリックス自動車に入社、2000年にコナミスポーツ、13年にサザビーリーグ入社などで、さまざまなブランドのマーケティング責任者を歴任。18年トリドールホールディングスに入社、マーケティング部長、22年に執行役員 CMO(Chief Marketing Officer)兼 丸亀製麺取締役マーケティング本部長。25年7月から執行役員 CMO兼 丸亀製麺常務取締役マーケティング本部長。51歳。長野県出身2000年に創業したトリドールグループの店舗数は、国内外合計で2000店を超えている。中でも「丸亀製麺」は国内で876店、海外ではインドネシアの「MARUGAME UDON」が130店を超えるなど、2025年11月末時点で合計921店を構え、世界的な規模で急成長してきた。低価格のセルフ式うどんのほか、ラーメン、カフェなど複数の業態を幅広く展開する大手外食チェーンの業績は、着実に伸びている。
心的資本経営では、従業員の心(ハピネス)を最優先しながら、顧客に感動(カンドウ)を与える経営を目指す。「ハピネス」と「カンドウ」の頭の2文字を取って「ハピカン」と呼んでいる。
南雲本部長は「お客さまの心(感動)にいかに火をつけるかが繁盛の鍵。よって従業員の心にいかに火をつけるかが最大のテーマになります。これを動かしていくための仕組みが『ハピカン繁盛サイクル』です。従業員の心を動かして、お客さまが(丸亀製麺の体験に)感動してロイヤルティを高める。そして、売上高が拡大して従業員のハピネスに還元していく。このサイクルを途切れさせないように回していくよう、各店舗で心掛けています」と説明する。
このサイクルを回すために使うのが、「ハピネススコア」と呼ばれるデータだ。見えない従業員の心の状態を数量化。音声対話型の生成AIによるインタビューで、従業員の心のコンディションを数値化するのだ。お客からの食後の感情や声も「感動スコア」とし、お店の業績も「繁盛スコア」という形で可視化する。
この3つのデータの関係性は、データサイエンスを活用して解明。アップデートして価値あるデータに変換する。スコアは店長が見られる「ダッシュボード」に、毎日更新し表示する仕組みになっている。南雲本部長は「従業員満足度の調査など断片的に数値化している企業もありますが、EX(従業員体験価値)・CX(顧客体験価値)・業績をトータル的に、しかもリアルタイムで可視化できているのは弊社だけでは?」と「スコア」化に自信を示す。
加えて「経験の浅い店長に対しては『今、何をしなければならないか』についてもAIエージェントがアドバイスしてくれます。お店のハピカンアクションの活性化につながると思います」とそのメリットを強調する。
「『ハピネススコア』が1ポイント上がったら、店の売上高がどれだけ上がるか。データサイエンス会社と一緒に、2年半前から研究を重ねてきました。その結果、スコアの上昇が売上高にプラスの影響を与えることを明確につかめました」
南雲本部長は、トリドールのデータドリブンの経営方針が成果を生み出してきていることを強調した。
お客からの声は、スマホのQRコードを使って集められる仕組みだ。毎月約20万件ほどの声を各店舗ごとのダッシュボードでフィードバックする。
2024年7月からは、トリドールグループで働くアルバイトを含めた4万人に従業員専用アプリを提供。粟田社長の日々の出来事を投稿した「社長日記」や、従業員同士で感動した話など多様なハピネスコンテンツを共有している。こうしたコンテンツを見せることにより、グループ全員の内発的動機(やる気)を高める構えだ。
従業員とは2カ月に1度、丸亀製麺のキャラクターをインタビュアーとして、音声対話と最新の生成AI技術を組み合わせる「ハピネススコアインタビュー」を実施。従業員との対話を通じて心の状態を可視化し、幸福度を深く掘り下げスコア化する。「あなたは現在、誇りを持って働いていますか」など16項目の質問を用意した。
南雲本部長は「(自己申告で)文字で打ってもらう方式だとバイアスがかかりやすく、音声でインタビューした方が本音を引き出せます。これをAIが分析してスコア化していきます。将来的には前回インタビューした際の声のトーンを比較し、顔の表情なども加味して、できるだけ本心を可視化、データ化していきたい」と説明する。
外食チェーンの多くは、本部から売り上げ目標を提示され、その目標を達成するために店長以下の従業員が働くケースが多い。しかし、トリドールはこの常識を変えようとしている。
「本部からの命令に従う上位下達型ではなく、各店舗に権限を委譲して自律型の店舗運営ができるようにしています。本部から示す予算(売上目標)はありますが、お客さまへのサービスやエリア限定のオリジナルメニューを出せるなど、自律性を持たせています」
各店独自の取り組みが成功すれば、その店の自信につながるというわけだ。店舗を自律型にするために導入するのが「ハピカンオフィサー」制度であり、これまでの店長という肩書は徐々になくしていく方針だ。
丸亀製麺では店長の肩書を「ハピカンキャプテン」にあらため、店舗の管理業務は副店長に任せて、「ハピカンキャプテン」が店舗での従業員、顧客両方の感動体験づくりをサポートする中心的役割を担う。
丸亀製麺は、この「ハピカンキャプテン」を今後3年間で300人育成するという。2025年11月には、その一期生の任命式を実施。5人のハピカンキャプテンが誕生した。
ハピカンキャプテンに任命されて、4段階の最高のグレードに昇格すると、年収が最高で2000万円になるという。現在は年収が約500万円ほどの店長より、はるかに高い年収だ。待遇面を見て「キャプテン」になろうとするインセンティブが働く。
同社はこれまで、AIやデータサイエンスの会社4社と提携。数年間にわたり、AIエージェントの活用方法を検討してきた。当初はマーケティングに関するデータ分析で活用。現在は、粟田社長の号令によって、最新データの解析技術にもAIエージェントを取り入れる。
AIエージェント導入の具体的なメリットを南雲本部長は力説する。
「例えば、経験の浅い店長に対しては今何をしなければならないか、人間だと気付かない点についてもAIエージェントが提示してくれます。店長がそれを見てアクションを起こしてくれることで、店の活性化につながります。ここまでAIエージェントを活用している外食チェーンはないのではないでしょうか」
南雲本部長は「心的資本経営を、まずは国内の店舗に導入します。その結果を見た上で海外にも展開していきたい」と話す。「この経営方針がグループの売上高、業績拡大につながり、数年後には中期経営計画以上の成長につながることを信じています」
人の心の状態まで、数字に置き換えて可視化できるのか。公平な視点を持ち続けることは可能なのか。説明を聞いても疑問が残る気もするが、トリドールでは粟田社長以下、この機軸を経営の中心に据えて事業を展開している。
日本企業の大半では、部下との面談は上司が行っている。それを丸亀製麺では、音声対話型生成AIを使って、同社のキャラクターがインタビューをし、本音を引き出す。目指すデータドリブンの「心的資本経営」が業績にどれだけ貢献したのか。数年後の数字を見て検証したいものだ。
【イベント情報】学研が挑む"真のDX"
学研グループは、DXを目的化するのではなく、現場と顧客にとって“本当に使われるデジタル”を出発点に教育価値のアップデートに挑戦しています。本講演では、現場で浮き彫りになった課題や、実際に行ってきた改善や仕組みづくり、そこで得られた知見がどのように学研のDX推進を形づくんできたのかをお伝えします。既存のデジタル活用の成果と学びを振り返りながら、学研が目指す“真のDX”の姿をご紹介します。
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