ブラインドボックス×ロッカーの組み合わせとして、日本には類似のコンセプトがすでに存在します。東京・中野の衣料品卸、土橋商店では、コインロッカー型の「福箱」自動販売機を運営しています。500円を投入してロッカーを開けると、中身が見えない箱が入っているという仕組みです。
「福箱」は、日本の正月に販売される「福袋」の概念を応用したものといえるでしょう。MUMUSOの店内ミステリーロッカーもこのようなコンセプトのものという可能性もあります。その場合、一定の金額をレジで払ってくじ引きなどでロッカーキーをランダムに受け取る形なのでしょう。いかにもありそうですが、ロッカーに価格などの表示が一切なかったのが気になります。
店内設置型のミステリーボックスプロモーションは欧米でも実用化されています。英国のNoonah社が開発した「Prize Locker」システムは、QRコードスキャンによる顧客登録、ユニークPINコードの発行、店舗での開封体験という流れで、顧客データの収集とプロモーションを同時に実現しています。
英国のスポーツ用品チェーンSports Directは、ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)ロンドンゲームズの開催に合わせて、「Prize Locker」を活用した店内プロモーションを実施しました。
来店者はPrize Lockerに表示されたQRコードをスキャンし、ブランドセルフィーを撮影、連絡先を登録します。登録後、メールでユニークなエントリーコードが届き、再度店舗に戻ってPrize Lockerにコードを入力すると、当選の場合はロッカーが開いてNFLグッズやゲームチケットなどの景品を受け取れます。ロッカー自体もアメリカンフットボールのロッカールームを模したデザインで、効果音演出も加えられています。
このキャンペーンの狙いは、店舗への来店促進、ファーストパーティ顧客データの収集、SNSでのUGC(ユーザー生成コンテンツ)拡散の3点です。誕生日にNFLチケットを当てた顧客のエピソードが話題になるなど、ブランドとの感情的なつながりを生む施策として成功しました。
MUMUSOの物理的な鍵を使う方式は、このデジタルシステムとは対照的ですが、「開ける」という行為自体をイベント化している点は共通しています。
MUMUSOのミステリーロッカーから着想を得て、日本の小売業への応用可能性を考えてみます。
MUMUSOのロッカーを見つけた際、おそらく一定金額以上を購入した顧客に参加資格が与えられ、レジで会計後に店員がランダムな番号の鍵を手渡し、顧客が対応する番号のロッカーに鍵を差し込んで中の景品を受け取る――。そのような仕組みではないかと考えました。何が入っているかは開けるまで分からない。ここにゲーミフィケーションの本質があります。
この「購買」を「ゲーム体験」に変換する手法は、小売業の未来につながると考えます。
まず考えられるのは、ロイヤルカスタマー向け特典としての活用です。一定金額以上購入した顧客に「ラッキーキー」を提供し、店内ロッカーを開けると限定品、割引クーポン、次回購入時のポイントアップなどが当たる仕組みです。「何が当たるかわからない」ワクワク感が追加購入を促進します。
次に、在庫処分の新手法としての可能性です。シーズン落ちや過剰在庫をミステリーボックス化することで、通常の値引きよりも高い価格で販売できる可能性があります。「お得かもしれない」という期待感は、単純な割引よりも生活者の興味を引きます。
Prize Lockerの事例のように、「開封の瞬間」はSNSでシェアしたくなるコンテンツでもあり、顧客自身が広告塔となって口コミ効果でブランド認知が拡大します。
「福袋」文化を持つ日本には、ミステリーボックス型プロモーションを受け入れる土壌がすでにあります。重要なのは、それを単なるプロモーションではなく、ブランド体験の一部として設計することです。
とはいえ、あのロッカーの正確な仕組みはいまだに分かっていません。次にドバイを訪れる機会があれば、必ず店舗スタッフに詳細を確認しなければと考えています。もし読者の方でDubai Festival City Mallを訪れる予定がある方がいらっしゃれば、ぜひ実際に体験してコメントで教えていただけるとうれしいです。
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