コンビニ業界全体を見渡すと、近年は「売り場で商品を売る」にとどまらない、さまざまな試みが増えています。来店の動機を作り直したり、これまでとは違う関わり方を提示したりと、コンビニにおけるユーザー体験そのものを捉え直す動きが広がっている印象です。
その分かりやすい例の一つが、ファミリーマートによるコンビニエンスウェアの展開でしょう。他にもコンビニ各社からはUFOキャッチャーの設置といった取り組みも見られるようになりました。
今回のローソンの車中泊は実証実験中ということもあり、利用者数や客単価といった数値の変化は緩やかで、短期的に目覚ましい効果を創出する取り組みとは言えないでしょう。しかし、コンビニがこれから中長期的に目指していくであろう方向性を、無理のない形で先取りしている取り組みだと捉えることもできそうです。
ローソンはこれまでも、必ずしも短期的な効率だけでは測れない経営を重ねてきました。過疎地への出店も積極的で、近年では人口が3万人を切っている北海道稚内市で新店舗を続々とオープンさせたことも印象的です。同社の執行役員は日経クロストレンドの取材に対し「幼少期に近所のローソンと共に育った原体験があれば愛着が醸成される」と、中長期的なファン獲得の狙いを話しています。
今回の車中泊もまた、中長期的なユーザーとの関係性を視野に入れた一手として読み取ることができそうです。
既存インフラの意味を少しずらし、ユーザー体験を再解釈(リフレーミング)する。「何となく立ち寄る」「必要なものをサッと買う」といった体験だけでなく、車中泊という特別な体験を創出する。これは短期施策というよりも、時間をかけて信頼や親近感を育てていくような体験設計に近いものと考えられます。
こうした信頼や愛着は簡単には醸成されないからこそ、既存インフラや日常的な営みに着目して、ユーザー体験を捉え直すことの意味は大きいのではないでしょうか。ともすると「当たり前」すぎて、価値としては見過ごされがち。けれど、視点を少しずらし、ユーザー体験の文脈で読み替えてみると、そこにはまだ使われていない意味や可能性が残っていることも少なくありません。
日々の営みの中に、まだ気付けていない価値が眠っているとしたら――。「新しいことを足す」だけでなく、むしろ「何がすでにあるのか」「それはどんな意味があるのか」を問い直すことから、ユーザーにとっての価値が生まれる場合もある。今回の取り組みは、そんな視点の大切さを、コンビニという身近な存在を通して示しているように感じます。
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