先ほどの機械メーカーの話には続きがある。
課長は若手社員にチラシの修正を指示した。しかし、戻ってきた修正版も、やはりAIくさかった。言い回しが少し変わっただけで、本質は何も変わっていない。課長は気付いた。この若手は、AIに「修正して」と指示しただけなのだと。
「君さ、このチラシ、誰に読んでほしいの?」
課長がそう聞くと、若手社員は言葉に詰まった。
「当社と将来的に、取引してくれるお客さま、でしょうか」
「具体的には、どんなお客さまかな?」
「ええと……」
「ペルソナは?」
「え? ペルソナ?」
結局、この若者は社内勉強会で習ったはずのマーケティングの基礎知識、顧客視点などを深く考えず、ただAIに作業を依頼していただけだったのだ。
これは若手社員に限った話ではない。AIに丸投げする人は、往々にして「設計」をすっ飛ばしている。目的は何か。誰に届けたいのか。相手にどう動いてほしいのか。この根本的な問いに向き合わないまま、生成ボタンを押している。
だから、出てくるものはすべて「それっぽいが、刺さらない」ものになる。整っているが、芯がない。無難だが、心に残らない――。こうしたアウトプットを繰り返すうちに、いつの間にか「こんなものでいいだろう」と、自分の成果物に対する評価も甘くなっていくのだ。しかし、上司や同僚は確実に見ている。
「あいつの資料、毎回AIくさいよな」
そんなうわさが広まるのに、そう時間はかからない。
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