「アボカドバーガーを一つ」──埼玉県吉川市にあるモスバーガー吉川美南店のドライブスルーでは、AIが接客する「AIドライブスルー」の実証実験を開始した。
客: アボカドバーガーを一つお願いします
AI: アボカドバーガーを一つ
客: オニポテのセットにしてください
AI: かしこまりました。オニポテが一つ、セットのサイドメニューとしておうかがいします
このように、ドライブスルーの注文は利用客とAIの会話によって進む。注文した商品はサイネージにテキストで表示される。
音声AIを活用したドライブスルーの取り組みは海外でも進んでいたが、精度や顧客満足度の問題から撤退に追い込まれた例も少なくない。
人手不足が深刻化する外食産業において、ドライブスルーの効率化を急ぐなら、タッチパネルの導入でも十分なように思える。
しかし、モスフードサービスは「AIによる接客」を選択した。
本実証実験は、OMOソリューションや業務用ロボットの開発を手掛けるNew Innovations(東京都江東区)と協力して実施。New Innovationsの音声対話AIシステム「AI Order Thru」(エーアイ オーダー スルー)を活用する。
音声AIを活用する理由について、モスフードサービス ストアイノベーション室長の濱崎真一郎氏は、接客時の“会話”を重視していると語る。
「オンライン注文や宅配サービスの活用が発展する一方で、店頭やドライブスルーで購入するお客さまの数は多く、この先もなくならないと考えています。その理由を、私たちは“会話”が顧客体験価値に貢献しているからではないかと仮説を立てました」(濱崎氏)
実証実験の第1フェーズでは、AIによる接客が受け入れられるかを検証する。将来的には、人の対応では実現が難しい体験価値の創出を目指す。
では、スタッフの接客と比較して、AIが顧客体験向上の面で優れている点はどこか。
New Innovationsの代表取締役 Co-CEOを務める山田奨氏は「記憶力」だと話す。
「AIは人間では覚えきれない量の情報を正確に記憶します。この記憶力を活用して、将来的には、お客さまに合わせたメニュー提案ができると考えています」(山田氏)
例えば「辛くないメニューはどれか?」「600キロカロリー以内で糖質を50g以内に抑えたメニューを教えて」といった、人間では応対に時間がかかるような要望に応えることも、技術的には可能。AIの記憶力を活用すれば、人間には難しい、顧客一人一人のニーズに合わせた提案ができる可能性を見込んでいる。
濱崎氏は今回の実証実験について、完全な無人店舗化ではなく、AIと店舗スタッフの「ハイブリッド応対」を目指すと強調した。
実証実験は2026年度中に合計5カ所での実施を予定している。検証を経て、3年以内に常設での実装を目標とする。
モスの人気バーガーが「肉を減らしたのに、販売数180%に伸びた」ワケ “意外な顧客ニーズ”とは
「DXすれば万事解決」は幻想 米ドラッグストア大手の破綻にみる、デジタル投資の落とし穴
各社が進める「小型店舗」 コンビニと飲食チェーンで明暗が分かれそうなワケ
なぜ、セブンは一部店舗で“要塞レジ”を導入したのか 開発期間は3年 ある種の威圧感はカスハラにも効果あり?
「割高」イメージを乗り越えて、モスバーガーが「大復活」できた理由Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング