オープンソース化するソフトウェアに対する捉え方や期待が各所で異なるため、議論はしばしば発散してしまいます。各自治体は一般的に200種類以上のシステムを抱えており、規模、利用者数、扱う情報の性質も多種多様です。そのため、システムごとの特性に応じて、前述した「2.利用規約を定め、ソースコードを管理する体制を構築、維持すること」や「3.ソースコードを用いたソフトウェア製品が安定的に保守、運用されること」の条件も当然異なってきます。
全国のどの自治体でも必ず運用されるシステムなのであれば、オープンソース化することで、より多くの自治体の関心を集めることができるでしょう。一方、個別の自治体でしか役に立たないシステムであれば、将来的な活用を期待してソースコードの管理体制を維持し続けるのは非現実的です。
まず、OSS化するのは発注者たる自治体でなくても良いはずです。ソフトウェアを開発した事業者でも良いので、その場合は参議院の質問でもあった自治体の資産問題はそもそも発生しません。
また、OSSはフリーライドが課題ですが、この対象が自治体固有のシステムならば一般の人が使う場面はないので、フリーライドの可能性も低いでしょう。使う場面があるとしたら他の自治体ですが、保守サポートも無い中でフリーライドするような勇気が自治体にあるとも思えません。万が一、それにより業務が止まったら……と考える自治体が大半でしょう。
地域ベンダーがこのOSSの運用を担うのならば、事業として成立する可能性はあると思います。上述した3はこれで解決できるかもしれません。当然、相応の対価が発生しますし、それは従前と変わらない金額かもしれませんが、発注者である自治体から見れば、同じソフトウェアを運用できる事業者の選択肢が広がる方が安心とも言えます。
難所は2でしょう。法改正対応やバグフィックスを誰がするのか(OSSの保守は誰がするのか)については、そもそも人員が絶対的に不足しているのか、人員がいてもマネタイズの方法が見えないのかで考え方は異なります。ただ、コードを書くだけならばAIでもできる時代になりつつあるので、どちらかというと法制度の面からシステム実装のための設計ができ、テストできる役割の人がOSSを管理する組織に必要なのだと思います。
1700余りという規模の小ささが、これを難しくさせているのならば、公金(国費)を投入するポイントはここなのではないでしょうか。韓国は自治体のシステムをKLID(地域情報開発院)という組織が開発、運用、保守しています。
オープンソースとは意図が異なりますが、重複投資を削減するならばシステムそのものを集中開発、集中管理する方が合理的です。
言い方は良くないかもしれませんが、案外このあたりは利権になりやすいのではないかと思うので、国の外郭団体も含めて「誰も引き受け手がない」という展開にはならないのではないかと思います。
その上で、ソースコードの公開は別の意義もあります。それは「システムの透明性を高める」ということです。
現行の法制度がグチャグチャであり、それを体現したのが現在の自治体システムなのであれば、それがグチャグチャであることを誰かが認識しない限り、制度を整理することはできません。
つまり自治体を取り巻く現状を多くの方に知ってもらう機会になり得るのではないかというのが私の考えです。
デジタル大臣が自治体システム標準化の進捗について「問題ない」と発言したというニュースや、標準化期限が迫る中で十分な準備期間が確保されないまま衆議院の解散総選挙が取り沙汰されるなど、自治体を取り巻く厳しい状況に目を向けないかのような報道に触れることがあります。
そうした報道に接するたび、「自治体は理不尽な要請にも応じて当然」「システムは常に問題なく動いて当然」といった認識が根強い現状に対して、その当たり前を問い直す必要があるのではと感じます。
次回は最近のAIエージェントの動向について、自治体事務への適用を含めて考えてみましょう。
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