自治体DX最前線

“形だけ”の「自治体システム標準化」になりつつある今、オープンソース化は救世主となるか?(1/5 ページ)

» 2026年01月26日 07時00分 公開
[川口弘行ITmedia]

著者プロフィール:川口弘行(かわぐち・ひろゆき)

photo

川口弘行合同会社代表社員。芝浦工業大学大学院博士(後期)課程修了。博士(工学)。2009年高知県CIO補佐官に着任して以来、省庁、地方自治体のデジタル化に関わる。

2016年、佐賀県情報企画監として在任中に開発したファイル無害化システム「サニタイザー」が全国の自治体に採用され、任期満了後に事業化、約700団体で使用されている。

2023年、公共機関の調達事務を生成型AIで支援するサービス「プロキュアテック」を開始。公共機関の調達事務をデジタル、アナログの両輪でサポートしている。

現在は、全国のいくつかの自治体のCIO補佐官、アドバイザーとして活動中。総務省地域情報化アドバイザー。公式Webサイト:川口弘行合同会社、公式X:@kawaguchi_com


 こんにちは。「全国の自治体が抱える潜在的な課題を解決すべく、職員が自ら動けるような環境をデジタル技術で整備していく」ことを目指している川口弘行です。

 2025年末、自治体システム標準化にまつわるさまざまな問題点が話題になりました(関連記事その1関連記事その2)。筆者が関わっている自治体では、年末年始のシステム切り替え作業で大きなトラブルもなく、予定通りに無事完了しました。もっとも、範囲をかなり絞って対応したため、来年度以降に先送りにした作業も多く残されています。

 なお、私の観測範囲ではありますが、一連の標準化の取り組みにおいて「うまく乗り切った自治体・事業者」と「そうでなかった自治体・事業者」の違いが少しずつ見えてきたように感じています。

 両者の差はどこで生まれたのか。筆者は、主に2つの要因があると考えています。

  • 投入する資源の差(主に「人的資源」)
  • 既存パッケージソフトウェアの改修規模の差

 「人的資源」の違いは、事業者側・自治体職員側の双方に顕著に現れます。最終的には、関係者同士がどれだけ密にコミュニケーションを取り、どの程度までプロジェクト全体に目配りして意識を向けられていたかがトラブル回避の鍵となりました。

 また2つ目については、標準化の過程で、事業者が既存パッケージ製品をどの程度改修したかが重要なポイントです。限られた開発期間や不十分な標準仕様書、そして度重なる制度改正の下で、手戻りなくシステムを完成させるためには、既存パッケージ製品のソースコードを最大限活用するのが現実的な選択肢と言えるでしょう。

 ただ、各事業者がそれぞれのパッケージ製品のソースコードを活用せざるを得なかったことで、本当に標準化するべきだった「内部のデータ形式」や「税計算の端数処理の扱い」などが各社でバラバラのままになりました。標準化の目指す姿が「特定の事業者への依存(ベンダーロックイン)を解消し、将来的な事業者の変更を容易にすること」であるならば、その実現は逆に難しくなったのかもしれません。

 この観点から、今回は「自治体システムにおけるオープンソース化」について考えてみたいと思います。

photo01 自治体システムのオープンソース化について、制度面や事業性の観点から現状を整理する、写真はイメージ(ゲッティイメージ、以下同)

オープンソース化、自治体にとってのメリットは?

 「オープンソース化」とは、ソフトウェアのソースコードを開示し、誰もがその内容を把握し、自由に修正・改良できるようにすることを指します。

 ただし、単にソースコードを公開するだけでは、ソフトウェアの機能改善やバグ修正といったアップデートが各自でバラバラに実施されてしまい、ソフトウェア全体の統制が取れなくなる恐れがあります。

 そのため、多くの場合は一定のルールを設けてソースコードや開発プロセスを管理する仕組みが採用されています。このように、明確なルールの下で運用・管理されているソフトウェアをOSS(オープンソースソフトウェア)と呼びます。ちなみにOSSの対義語となるソフトウェアのことをプロプライエタリソフトウェア (Proprietary Software)と言います。

 歴史上、最も普及し成功しているOSSの代表例がLinuxです。Linuxの中核であるカーネルはOSSとして開発されており、モバイル端末向けOSのAndroidをはじめとする多くのソフトウェアやサービスの基盤となり、現代のデジタル社会を支えるインフラへと発展してきました。

 自治体システムでOSSを活用することは、珍しいことではなくなりました。多くの場合、自治体はシステム導入の際に事業者と契約し、そのシステムにOSSが含まれていれば、事業者がOSSを含む全体のサポートや動作保証も一括して担ってくれるのが一般的です。

 事業者の立場から見ても、すでに多くの実績があるOSSであれば、サポートに役立つ情報が広く流通しており、想定外の問題が発生した場合にも対応しやすい環境が整っています。加えて、類似のソフトウェアを新たに開発したり購入したりするよりも、OSSを活用することでコストを大幅に抑えられる点が大きな利点となっています。

 また、ソースコードが公開されていることにより、OSSの不具合が生じた際には、自ら原因を調査できる点も大きな利点です。近年では生成AI技術を活用したコーディングエージェントの普及により、規模が大きく複雑なOSSであっても、その内容を解析するハードルが大きく下がってきていると感じます。

       1|2|3|4|5 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

SaaS最新情報 by ITセレクトPR
あなたにおすすめの記事PR