川口弘行合同会社代表社員。芝浦工業大学大学院博士(後期)課程修了。博士(工学)。2009年高知県CIO補佐官に着任して以来、省庁、地方自治体のデジタル化に関わる。
2016年、佐賀県情報企画監として在任中に開発したファイル無害化システム「サニタイザー」が全国の自治体に採用され、任期満了後に事業化、約700団体で使用されている。
2023年、公共機関の調達事務を生成型AIで支援するサービス「プロキュアテック」を開始。公共機関の調達事務をデジタル、アナログの両輪でサポートしている。
現在は、全国のいくつかの自治体のCIO補佐官、アドバイザーとして活動中。総務省地域情報化アドバイザー。公式Webサイト:川口弘行合同会社、公式X:@kawaguchi_com
こんにちは。「全国の自治体が抱える潜在的な課題を解決すべく、職員が自ら動けるような環境をデジタル技術で整備していく」ことを目指している川口弘行です。
毎年年末が近付くと、その年にご縁のあった自治体をいくつか選び「ふるさと納税」をしています。返礼品が目的ではありませんが、機会があればご当地のレトルトカレーを選びます。1パックだけ自分で味わい、残りはすべて地元のフードバンクに寄付しています。
ご当地カレーは珍しい食材が使われていることが多く、新しい発見があり楽しみにしています。特に気に入ったカレーは、現地を訪れる際のお土産として購入することもあります。
ふるさと納税をめぐっては、過熱する返礼品競争や都市部からの税収流出といった批判も少なくありません。一方で、納税者が自ら寄付先を選び、政策や取り組みに対して意思を示せる仕組みとして、地方自治や自治体経営に新たな緊張感をもたらしている側面もあると筆者は考えています。
今回は、ふるさと納税を通じて見えてくる「納税者としての意思表示」という視点から、自治体の経営や地域との新しい関わり方について考えてみたいと思います。
ふるさと納税制度は、応援したい自治体を納税者が自ら選び、寄付を行うことでその一部が所得税や住民税から控除される仕組みです。寄付先の自治体からは返礼品として地域特産物などが贈られる場合も多く、こうした仕組みは地域活性化を後押ししています。
この制度は2008年(平成20年)に導入されました。地域間の税収格差の是正や、地方自治体の自主的なまちづくりの支援といった「地方創生」を目的としています。開始以降、各自治体は寄付金を活用し、さまざまな仕組み改善・拡充を進めてきました。
しかし、良い面ばかりではありません。
自治体間での返礼品競争が激化し、地場産品による新たな販路開拓やPRの一方で、高価な返礼品の提供や、ふるさと納税ポータルサイトの“特産品通販化”など、制度本来の趣旨から逸脱しかねない現状や課題も指摘されてきました。そのため、返礼品については「寄付額の何%以内」「地場産品限定」など規制が度々強化されています。
また、普及が進む一方、制度運営を支える「事務代行業者」の存在が大きくなっています。彼らが寄付受付、返礼品発送、領収書発行など幅広い業務を担うことで、自治体の負担軽減に貢献しているものの、その手数料は寄付額の10〜20%程度に達するケースもあり、決して小さくない割合です。運営コストの増大が自治体財政に影響を及ぼしています。
加えて、この制度の最大の特徴である「寄付先自治体の選択」は、税収の「都市部から地方への移転」を生み出し、都市財政に大きな影響を与えています。
総務省の発表によれば、2022年度のふるさと納税寄付受入額は約8307億円であり、その多くが人口規模の大きい都市部から地方への流出となりました。東京都23区では約1020億円流出となり、全国の主要都市でも同様の税収流出が見られています。
こうした背景を踏まえると、ふるさと納税は地方の新たな財源確保や地域活性化に寄与している一方で、都市と地方の財政バランス、安定的な運営体制の構築、さらには制度の本来の趣旨を再確認するための仕組みの見直しなど、多くの課題や議論が残っているのも事実です。
持続可能な制度として機能させるには、自治体同士が必要以上に競争するのではなく相互協調や経営資源の適正な配分、そして納税者への情報発信や理解の促進が重要になると考えています。
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