こうした文脈を踏まえ、ふるさと納税の3つ目の意義である「自治体間競争の促進」について考えてみましょう。
これは、自治体が寄付者に「選ばれるにふさわしい地域」としてどうあるべきかを模索し、それぞれの特徴や政策をアピールして、互いに競い合うことを意味しています。
人が特定の地域に住み続ける理由の多くは、地縁や就業など生活基盤によるものが主であり、政策に多少の不満を抱えていても、すぐに転居という選択をする人は少数です。それであれば、基本的な政策は受け入れつつも、自分の意思を「寄付」という形で住民税の一部を他の自治体へ移す、選挙とは異なる意思表示の手段として活用できるのではないでしょうか。
確かに、流出側となる自治体の立場は厳しいものがあります。上述した規模で税の流出がある以上、行政サービスの低下を懸念する声があるのも事実です。
自治体経営の現場に携わる立場として、こうした懸念は十分理解しています。しかしながら、それでも「減収を嘆くよりも、政策で選ばれる存在になってほしい」という一人の納税者としての思いがあります。
実際、筆者は個人的に関心のある施策に取り組んでいる都市部の自治体にも寄付しています。政策への評価がそのまま財政面に反映されるこの仕組みは、行政運営に新たな緊張感をもたらし、結果的に地方自治の活性化につながるものと感じています。
こうした状況下で自治体が寄付を集めるためには、他の自治体との差別化を図り、政策の違いをしっかりとアピールすることが求められます。新しい施策を際限なく追加して差異化しようとすれば、経営資源はすぐに枯渇してしまいます。そのため、限られた経営資源の中で何を優先するかを明確に打ち出す必要があります。
例えば、独自施策を充実させるために、国に裁量権拡大を働きかけることは、地方分権の推進にもつながるでしょう。環境問題や新産業育成、災害復興など、具体的な取り組みを前面に打ち出す自治体もあります。
ふるさと納税であれば、住民以外でも寄付を通じて、その政策に賛同や支持を表すことができ、万が一、自分の自治体の方針に賛同できない場合でも、他の自治体への寄付で自らの意思を示すことが可能です。
国の想定を超えるような独自の発想で政策の差別化に挑戦する自治体が現れるなら、筆者はそのような取り組みを積極的に支持します。その上で、ふるさと納税が自治体の健全な運営に資するよう、今後も積極的に活用されていくことを期待しています。
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