生産管理システムの現場導入には、TEDに限らず共通する難しさがある。経営者は、データの可視化や効率化といったメリットを評価し、導入に前向きな一方、現場では反発が起きていることも少なくない。
現場が反発する理由として「監視されているようで嫌だ」(内山氏)という声が多かった。特に、これまで各自の判断や段取りで仕事を回してきた現場ほど、「管理されている」「縛られている」という感覚を持たれる傾向にある。
ただ、その反応を掘り下げていくと、単なるシステムへの拒否感だけではないことが分かった。
「背景には『この業務の振り分けは自分にしかできない』という自負や感じている価値が薄れてしまうことへの不安、長年積み上げてきた段取りや裁量を手放すことへの抵抗感があるのではないかと思っています。もちろん、加工技術や現場での動きには会社ごとの特徴がありますが、生産管理においては独自性はないと思うので、どうしたらTEDを現場で使ってもらえるかを常に考えています」
広島メタルワークも例外ではなかった。前田氏はTED導入時に「今うまくいっているものを、なぜ変えるのか」という疑問の声が上がったと当時を振り返る。
それでも導入を進められた背景には、経営として迷いを残さず、「これでいく」と明確に旗を振ったことがあった。方針を示したうえで、進捗入力は全員必須とし、例外を設けなかった。
年齢や経験を理由に免除しなかったからこそ、分からない人は「教えてほしい」と周囲に頼らざるを得なくなる。その結果、現場では若手がベテランにデジタル操作を教えるといった、新しいコミュニケーションが生まれていった。
前田氏は、導入時の最大の壁は「機能が足りないこと」ではなく、「監視されるのではないか」「やり方を変えたくない」といった感情面にあると分析している。製造現場でよく聞く「うちはアナログなんで」という言葉についても、実態はデジタルが苦手なのではなく、変えたくないだけのケースが多いという。
前田氏は「日常的にスマホを使っているのに、製造現場はアナログで変えたくないというのは違和感がある」と、中小製造業における現場の矛盾を指摘する。TEDは自社が導入して効果を実感しているからこそ、「(他社にも)テクノロジーを導入して儲(もう)かる仕組みに変えていってほしいです」と展望を話した。
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