JR東日本の例だけを見ても、ローカル線による損失は約790億円に上る。一方で、衰退が進む地域の実情を考えれば、ローカル鉄道が自助努力だけで収益を上げ、黒字化するのはもはや不可能だ。
実際、中小のローカル私鉄の多くは、さまざまな形の公的補助がなければ運行を続けられない。地域住民の生活を支えるという観点に立てば、鉄道が黒字か赤字かは、すでに主要な論点ではなくなっている。こうした考え方は、すでに過去の政策判断にも反映されてきた。
国鉄が経営再建を進める中で、1980年代初頭に利用者の少ない地方路線の整理や廃止が現実の課題として浮かび上がった際、一部の路線は第三セクターへと移管された。いわゆる「三セク鉄道」で、行政と民間の双方が出資者とされているが、実際には出資の大半を都道府県や市町村が担っている。事実上の公営鉄道といえる存在だ。こうした鉄道は「地域密着」を掲げ、駅舎を商業施設として活用するなど地域振興に取り組みながら、路線の維持を図っている。
さらに近年では、民営鉄道であっても、線路や駅舎、車両といった設備を自治体などの公的機関が取得・保有し、維持管理費を負担する一方、鉄道事業者には無償で貸し付けて運行を任せる「上下分離」と呼ばれる方式も広く採用されている。
それにもかかわらず、「鉄道は収益事業である」「鉄道は投資の対象である」という、明治時代から続く考え方が、いまだに根強く残っている。「赤字ローカル線」という呼び方は、今日においては否定されるべきだ。黒字か赤字かではなく、地域のインフラとして維持すべきかどうかで議論すべきなのである。
道路や空港、港湾といった交通インフラの中で、なぜか収支が厳しく問われるのは鉄道だけだ。道路の多くは無料で利用できるにもかかわらず、2025年度の国土交通省の道路関係予算は2兆3137億円に上る。そのうち、国道の新設や維持管理などの直轄事業だけで1兆4578億円が計上されている。
一方、鉄道関係の予算は3468億5500万円にとどまる。その全額は、補助金として鉄道事業者に交付される事業だ。内訳を見ると、北海道新幹線の札幌延伸といった整備新幹線に2658億円が充てられており、結果として大都市圏や幹線鉄道への配分が中心となっている。
このバランスをどう評価すべきか。収支を常に求められる鉄道会社ではなく、地域インフラをどう支えるのかという、国や地方自治体など行政側の姿勢こそが、ローカル線の将来を左右している。
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