企業不祥事を防ぐコツは「昭和」にあり? 今こそ学ぶべき名経営者たちの教えと、注目すべき「現代企業」とは(2/5 ページ)

» 2026年01月29日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

「商い」以前に重視すべきことがある

 筆者の経験を踏まえれば、組織が危機的な状況に陥った時に組織内ムードの急変によって、危機回避が優先されガバナンスが機能しない、心理的安全性への配慮が切り捨てられる、といった事例は容易に起こり得るからです。企業の健全性は、社内ムードによって容易に崩されてしまうのです。不祥事の根本的防止には、ムードに左右されない組織風土をつくりあげることこそが、重要なのです。では、それはいかにして可能になるのでしょう。

 日本の経営思想の歴史をたどれば、先人たちは決まって健全経営の基本として、商い以前に「人として」を守ることの大切さを説いていることをご存じでしょうか。古くからわが国のビジネス発展のベースには、道徳心を重視するという姿勢があったのです。

 しかしながら今、この姿勢が置き去られていると思うのです。ムードに流されて不祥事に手を染めないためにも、経営者も従業員も確固たる道徳心を持つことが肝要であると、先人の教えは示唆しています。

 古くは商業がビジネスとして定着した江戸初期に、禅僧の鈴木正三が「正直」の大切さを説き、さらに町人層のビジネスが大きく台頭した江戸時代中後期には「道徳」を基本とした商いの正しい在り方を、儒学者の石田梅岩が「石門心学」として世に広めました。

 それらを受ける形で、明治時代の殖産興業期に銀行、保険、製紙、繊維、食品、サービス業など、150もの企業の立ち上げにかかわったのが渋沢栄一です。渋沢が著書『論語と算盤』などを通じ、ビジネスは論語の教えに従うような道徳的なおこないと両立することが重要である、として日本の近代化に大きく貢献したことは良く知られているところでしょう。

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