もう一つ、サイボウズが改革の折に始めた特筆すべき施策があります。それは「100人100通りの働き方(現『100人100通りのマッチング』)」です。多様性の時代に合わせ、社員一人一人のビジョンの実現に向けて要望のあった就業ルールを取り入れる制度です。
青野社長は「勤務先企業の成長に貢献できるような業務をがんばることが、将来的な自己実現につながると実感できるならば、それはきっと『楽しく働ける』ことにつながるはず」と、自著『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』(PHP研究所)で指摘しています。そういう考えで制度化されたものであり、活力ある組織づくりを目指した施策です。
この施策こそ、終身雇用制度の下、組織一丸で西欧諸国に「追いつけ、追い越せ」をやってきた昭和になかった、新しい時代の発想であるといえます。しかしよくよく考えてみれば、施策の根底にあるものは「社員に対する利他」であり、ここでもしっかり「利他」という先人たちの経営思想に連なっているのです。
「100人100通りの人事」は、働き方改革の時代を先取りしたとの評価を得て、青野社長が新しい時代の経営者として注目を集めるきっかけとなりました。しかし、裏側にある経営思想を深堀りすれば、実は日本経済の発展をリードしてきた先人たちの教えを、確実に引き継いでいることが分かるのです。
改革以降のサイボウズは、約20年にわたって右肩上がりの成長軌道を描き、「働きがい」と「働きやすさ」を兼ね備えた「プラチナ企業」のナンバーワン(2024年日本経済新聞社調査)に評価されてもいます。同社はその経営思想について「制度、ツール、風土は三位一体」(サイボウズ・オフィスツアー資料)としています。そして、組織風土は理念や行動規範の徹底のみで整うものではなく、社員への利他を基本とした人事や福利厚生の制度や執務環境などのツールも整えてはじめて、健全な発展を続け得る組織風土ができあがると説明しています。
不祥事の温床から抜け出しきれない昭和企業の経営者には、大いに参考にして欲しい新時代の経営思想ではないでしょうか。
株式会社スタジオ02 代表取締役
横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。銀行では企画、営業企画部門を歴任し、06年支店長職をひと区切りとして円満退社した。その後は上場ベンチャー企業役員などとして活躍。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーをする傍ら、出身の有名超進学校人脈や銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆者やコメンテーターを務めている。
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