「私の仕事、なくなりますか?」 DHC、買収後の社員の不安に“全員対話”で向き合った3年間(1/3 ページ)

» 2026年01月30日 07時00分 公開
[中根ほづ美ITmedia]

 サプリメントや化粧品を手掛けるディーエイチシー(DHC、東京都港区)は、創業者である元会長の差別発言により、社会から批判を浴びた。

 企業としての信頼が揺らいだ同社は、2023年にオリックスグループによる買収を受け入れ、経営体制を刷新した。現在を「第2の創業期」と位置付け、組織の再設計を進めている。

 経営体制の変革、ガバナンスの強化、縦割り組織の解消――。こうした変革の裏側では、従来の体制で長年働いてきた社員たちから不安の声も上がった。

 同社はどのようにして、社員の不安に寄り添い、変革への一歩を踏み出したのか。広報室部長の山本美和氏へのインタビューからひもとく。

photo01 DHC 広報室部長 山本美和氏(編集部撮影)

まず着手した「経営の形」――なぜトップを3人に?

 変革の起点となったのが「トップの個人判断に依存しない経営」への転換だった。

 2023年1月、創業者が築いた企業からオリックスグループの出資会社に。4月には新たな経営陣が就任し、再スタートを切った。

 特徴的なのが、代表取締役会長CEO、代表取締役社長COO(最高執行責任者)、代表取締役副社長による代表取締役3人体制への移行だ。

 CEOにはポーラ・オルビスホールディングス取締役、オルビス代表取締役社長などを歴任し、化粧品・通販業界で豊富な実績を持つ高谷成夫氏が就任。COOにはDHCの生え抜きである宮崎緑氏が就き、副社長にはオリックスグループから小高弘行氏が参画した。

 創業者によるトップダウン型の意思決定が色濃かった旧体制から一転、新体制が掲げたのは「自主自律型」の組織への転換だった。

 意思決定スピードの速さという従来の強みを残しつつ、多角的な視点から経営判断を行う。そのために、3人の代表がそれぞれ明確な役割を持ち、相互に補完し合う体制を選択した。

超・縦割り組織からの脱却 全社で進めた“棚卸し”

 ガバナンスの再構築と並行し、社内で進めたのが事業と組織の“棚卸し”だった。

 当時の組織課題の一つが、旧体制時の「縦割り」の組織文化。同社では、直営店、通販、一般流通が事業の柱となっているが、従来は各事業が個別に業務を進めており、横のつながりがない状態だった。

 商品開発では、その商品に携わる少人数のみで情報を共有し、販売促進やマーケティング施策も各事業で連携することはほとんどない――。この風土を変えて、横串で連携できる組織を作ることが、大きな命題だったと山本氏は話す。

 新体制発足後、まず全社の現状を把握し課題を定めるため、部門横断プロジェクト「Project Bright」を立ち上げた。同プロジェクトは「ガバナンス」「商品開発」「CX」「DX」などのテーマ別に設けた分科会で構成され、各分科会で部門を横断したメンバーが話し合い、事業や組織の課題の洗い出しと、改善の方針を策定していった。

 組織の現状を把握したことにより生まれた変化の一つが、会議体の変化だ。

 例えば、従来は新商品を開発する際、個別の部門内で完結していたが、現在は代表取締役3人をはじめとする多数の部門が参加する「商品審議会」での議論を経て、コンセプトや仕様を決定して製造に至っている。

 こうした事例の積み重ねにより、全社を俯瞰で捉えた横のつながりのある風土へと、少しずつ変化していったという。

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