たった一日で43兆円。2月3日、米国のソフトウェア関連株から消えた時価総額である。引き金を引いたのは、巨額の資金を集めるAI企業「Anthropic」が発表した、ある「プラグイン」だった。AIが「賢いアシスタント」から「仕事を実行する同僚」に変わる。その転換点が、いま訪れようとしている。
今回の震源地となったAnthropicは、AI業界では知られた存在である。2021年、ChatGPTを開発したOpenAIの元幹部らが「より安全なAI」を掲げて設立した。提供する対話型AI「Claude(クロード)」は、ChatGPTやGeminiと並ぶ主要AIの一角を占める。
GoogleやAmazonから数十億ドル規模の出資を受け、評価額は600億ドル(約9兆円)を超えるとも報じられる。特に強みを発揮してきたのが、企業向けのソフトウェア開発支援だ。自律的にプログラミングを行う開発ツール「Claude Code」がプログラマーの間で急速に普及し、エンタープライズ向けAI利用ではシェアトップに立つ。その同社が、開発者以外のビジネスパーソンに向けて新たな一手を打った。
それが、1月に発表された「Cowork」だ。従来のChatGPTは、質問に答える「チャット」にとどまっていた。答えは返ってくるが、原稿として整え、ファイルにまとめるところまでは人間の役割だった。
しかし、Coworkは違う。PC上のフォルダへのアクセス権をAIに与えると、AIが直接ファイルを読み込み、加工し、新たなファイルを生成する。例えば、出張でたまった領収書の写真をフォルダに放り込み、「経費精算書を作って」と指示する。AIが画像から日付、金額、店名を読み取り、勘定科目ごとに分類し、計算式の入ったExcelファイルを自動で仕上げる。
あるいは、過去1年分の契約書PDFが入ったフォルダを指定し「リスクのある条項を洗い出して」と頼む。AIが数十件の契約書を読み込み、問題のある箇所を一覧にしたレポートを生成する。チャットで「やり方を教えて」と聞くのではない。AIが実際に手を動かし、成果物を完成させるのだ。
1月中旬のCowork発表時点で、ソフトウェア株には警戒感が広がり始めていた。そして1月30日、Anthropicは追い打ちをかける。Coworkに「プラグイン」と呼ばれる業務特化機能を追加したのである。法務、営業、マーケティング、データ分析など11種類。中でも衝撃が大きかったのが法務向けプラグインだった。契約書のレビュー、秘密保持契約の仕分け、コンプライアンス対応。法律事務所や企業の法務部門が日々こなす業務を、AIが自動で処理できるようになった。
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