たった一日で43兆円が消えた日 Anthropic「Cowork」が揺るがしたSaaS神話「SaaS黙示録」の正体(2/4 ページ)

» 2026年02月05日 11時53分 公開
[斎藤健二ITmedia]

なぜ市場は「黙示録」と呼ぶほど動揺したか

 これまでAI業界には暗黙の分業があった。AnthropicやOpenAIは頭脳にあたるAI基盤モデルを提供し、それを使った業務ソフトは別の会社が作る。リーガルテック企業は法務AIを、営業支援会社は営業AIを開発し、それぞれが顧客から利用料を得る。

 Coworkのプラグインは、この構図を壊しにかかった。Anthropicが自ら業務ソフトの領域に踏み込んできたのである。しかも、リーガルテック企業が年間数十万円から数百万円で提供してきた機能が、月額20ドル(約3000円)のサブスクリプションに含まれる形で登場した。

Coworkの初期画面。「ファイルを作成」「データを分析」「会議の準備」などのタスクを選択し、AIに仕事を任せる
Coworkの実行画面。「デスクトップのスクリーンショットを内容に沿った名前を付けてフォルダに整理して」と指示すると、AIが自ら計画を立て、ファイルを確認・リネーム・整理していく

 「SaaS is Dead(SaaSは死んだ)」。AI時代の到来とともに、こうした言説がささやかれてきた。だが、それはあくまで抽象的な懸念にとどまっていた。Coworkのプラグインは、SaaSがどのような形で「死ぬ」のか、その具体像を市場に突きつけた。証券会社米ジェフリーズのトレーダーは、この日を「SaaSpocalypse(SaaS黙示録)」と呼んだ。「とにかく売れ、という投げ売りだった」。AIに置き換えられる企業は、どこまで広がるのか。その境界線は、もはや誰にも見えない。

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