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「黒字リストラ」の裏で進む必要な人材の選別──AI時代に「食いっぱぐれない」キャリア戦略AI・DX時代に“勝てる組織”(1/4 ページ)

» 2026年02月09日 07時00分 公開
[小出翔ITmedia]

連載:AI・DX時代に“勝てる組織”

AI時代、事業が変われば組織も変わる。新規事業創出に伴う人材再配置やスキルベース組織への転換、全社でのAI活用の浸透など、DX推進を成功に導くために、組織・人材戦略や仕組みづくりはますます重要になる。DX推進や組織変革を支援してきたGrowNexus小出翔氏が、変革を加速させるカギを探る。


 「AIのアウトプットの上限は、使い手が優秀かどうかで決まる」──この残酷な真実が、日本の雇用を大きく変えようとしています。

 AIによる影響は、単なる業務効率化の範囲にはとどまりません。労働市場では今、厳しい「選別」が進んでいます。

 企業は「頭数を増やす」戦略から「高い付加価値を生む人材に人件費を集中させる」戦略へと舵を切り始めました。これにより起こっているのが「黒字リストラ」です。既にスキルの高い“高スペック人材”がこれまで以上に優遇され、オフィスワーカーの椅子は急速に減り続ける……。

 本稿では、データと研究結果に基づき、AI時代の労働市場で起きている「静かなる選別」の実態と、これからの時代を生き抜くためのキャリア戦略を考察します。

photo01 日本の労働市場では、構造転換に伴う人員の「静かな選別」が進んでいる(提供:ゲッティイメージズ、以下同)

黒字リストラが示す構造変化

 日本企業の雇用慣行が、音を立てて変わりつつあります。その象徴が、昨今急増している「黒字リストラ」です。

 東京商工リサーチが公表した調査によれば、2024年に早期・希望退職を募集した上場企業は57社、対象人数は約1万人に上りました。特筆すべきは、そのうちの約6割が黒字企業であったという事実です。

 業績が堅調であるにもかかわらず、なぜ人員削減に踏み切るのでしょうか。その背景には、年功序列によって膨張した人件費が、DXやAIといった成長領域への投資を圧迫しているという構造的な課題があります。企業は今、現在の事業環境にスキルが適合しない人材を削減し、その原資をAI投資や高度デジタル人材の獲得に再配分するという、大胆なポートフォリオ転換を進めています。

 この戦略的シフトに伴い、報酬の二極化も鮮明になっています。例えばNECでは過去に、45歳以上を対象に希望退職を募る一方で、AIなどの分野で実績のある新卒に年収1000万円以上を提示した例があります。富士通も「高度人材処遇制度」を設け、AIやセキュリティ分野のトップ人材に最高で年収3500万円を提示しています。

 マクロの視点で見ても、2024年度の一人当たり名目賃金の上昇率は33年ぶりの高水準となる見込みです。厚生労働省の調査では約9割の企業が賃上げを実施または予定しています。しかし、同時に黒字リストラや採用の絞り込みも進行している事実を踏まえると、企業の本音は「総額人件費は抑制しつつ、一人当たりの生産性を最大化したい」という点にあると言えるでしょう。

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