今回の高市政権は、日本の戦後経済史における「強い自民党」の系譜を継ぐものである。
自民党が他の政党よりも勢力を持ち、過半数の議席を占めていた55年体制(1955〜1993年)下では、「鉄の三角形」と呼ばれる政・官・民の緊密な連携が重厚長大産業を育成し、後の高度経済成長の礎となった。また、55年体制末期の1986年に誕生した中曽根政権では、電電公社(現・NTT)や日本専売公社(現・JT)の民営化といった大規模な構造改革が行われてきた経緯がある。
2026年の高市政権は、この「強いリーダーシップによる改革」というDNAを継承している。しかし、過去と異なる点は債券市場の動向である。
予算編成において反対派の抑制が効かない状態での「積極財政」への懸念から、日本の10年債利回りは一時2%の大台を突破した。
金利が上昇すれば、有利子負債の多い企業にとっては、返済する上での利息負担が重くのしかかる。
スタートアップ企業にとっては、資金調達のハードルが上がる。国債の利回りが上昇すれば、リスクの高い株式に投じるよりも、元本保証があり確実性の高いリターンが見込める国債の魅力が相対的に高まるためだ。これまで以上に、資本コストや自社のバリュエーションを意識した経営がシビアに求められることになる。
そのような環境下では、先行投資による赤字を将来回収する「Jカーブ」型のビジネスモデルよりも、初期のうちから安定的に黒字を積み上げていくビジネスモデルのほうが、自己資金で運営するにしても、融資や投資を受けて運営するにしても、有利に働く。
ちなみに、自民党の安定政権が続いた55年体制下の政策金利は2.5%から9%程度で推移していた。これに対し、日本における現状の政策金利は0.75%。金利には依然として伸び代が大きく、変動金利の場合は、金利負担が現状の数倍に至る可能性もあるため注意が必要である。
歳出の拡大が限度を逸脱すれば、金利上昇、ひいてはインフレの急激な加速が起こる可能性もある。議会に強力な野党が不在となった今、債券市場がある種の“野党”として機能するような現象が起こるかもしれない。
サナエノミクスの恩恵を享受できる産業であっても、その果実を金利負担で失っては元も子もない。
政治的安定という追い風を、自社の財務体質改善と事業構造の転換に充てられるか。歴史的な金利上昇局面において、着実な「実利」を追求する規律ある企業こそが、着実に生存していくことになるだろう。
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